今の社会では、至るところで競争が行われ、「競争に勝つこと」「強いこと」「富や名誉、お金など、たくさんのものを所有すること」を幸せだと思っている人は少なくありません。
あるいは、「社会のために働き、社会の役に立ってこそ、生きる意味、存在する意味がある」と思っている人もたくさんいるでしょう。そんな社会の中で、人が自分の弱さを認めること、弱さを得た人が自己肯定感を持つことは、非常に困難です。
でも、先ほど述べたような恐れは、本当は必要ありません。不完全でも、たとえ何もできなくても、人は存在しているだけで、十分に価値があり、生きている意味があるのです。
自分の弱さを認めたほうが人は強くなれる
勇気を出して自分の弱さを認め、受け入れることができれば、あるがままの自分に価値があり、生きている意味があることを実感できるはずです。強いところも弱いところもみんなひっくるめて、あなた自身であり、それらすべてがあなたらしさを形づくっています。
強いところだけでなく、弱いところもきちんと認め、受け入れて初めて、あなたは誰かの真似ではない、社会の価値観をただなぞっただけではない、真にあなたらしい人生、本来の自分の人生を生きられるようになるのです。
自分の弱さを認め、受け入れている人は、「自分が完全ではないように、他人も完全ではない」ということを心から理解できます。社会の価値観に惑わされず、自分の価値観で自分や他人を見つめることができます。
また、自分や他人に対して「自分は強い」「自分は間違っていない」と言い聞かせる必要がなく、自分や他人を責める必要もありません。そのため、他人の弱さを認め、受け入れることができるのです。
最後になりますが、弱さを認めるというのには、実はきちんとした理論的な背景が本当は必要です。ふだん、ホスピスの現場で活動していると、頭でわかってはいても、弱さを受け入れることの難しさを本当に感じます。認めてくれる誰かとのつながりなく、これでよいと開き直るわけではないという意味です。ただ、それでも後悔なく自分らしい人生を生きていくために、一緒にこの問題について皆さんと考えていければと思います。