死の直前に後悔しないためには、どうしたらいいのか。4000人の患者を看取ったホスピス医の小澤竹俊さんは「たとえまったく誰かの役に立つことができなくなったとしても、人には、ただ存在するだけで価値がある。頑張って生きてきた自分を、いたわり、受け入れてあげてほしい」という――。
※本稿は、小澤竹俊『自分を否定しない習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。
ホスピス医が患者に必ず問いかける質問
私は、がんをはじめ、苦しい病気を患い、人生最後のときが近づきつつある患者さんに関わるとき、必ず次のような問いかけを行います。
「あなたは今まで、なぜこのような大変な病気と闘ってこられたのですか?」
「病気を抱えながら生きる際に、あなたを支えてきたものはなんですか?」
なぜなら、この問いかけをすることにより、「どうして自分ばかりがこんなに苦しい思いをしなければならないのか」「自分の力で動くこともままならず、誰の役にも立てない自分など、死んでしまったほうがましだ」などと思っていた患者さんが、「自分はたくさんの人に支えられている」と気づき、自分が存在する価値や意味を実感し、自分自身を受け入れられるようになることが少なくないからです。
1~2割が「支えてくれた存在はいない」と答える
なお、こうした問いに対し、8~9割ほどの方は、自分を支えてくれた存在として、すぐに家族や友人、私たち援助者などを挙げ、周りの人たちに感謝し、「大切な人たちのために、一日でも長く生きよう」という思いを新たにします。
ところが、残りの1~2割ほどの方は、最初のうちは「自分には、支えてくれた存在などいない」と答えます。
そうお答えになるのは、「誰にも頼らずに生きてきた」という気持ちが強い人、人に甘えたり大事なことをゆだねたりすることが難しい人が多いように思います。