優秀で若い人材が大企業でくすぶっている
〈ヒト〉も似たような事情にある。日本では大企業が有能な大学生を一括採用で、ほぼ青田買いする。最近では早慶でも東大などでも起業を目指す学生が増えている。あるいは起業の勉強のため、外資系コンサルティングへの就職志望者も増えている。しかし数の上では圧倒的に、ポテンシャルのある若手人材が大企業に吸い取られる。
ビジネススクールに経営の勉強にやってくる大企業の若手社員たちと話してみると、潜在的な能力者が多い。しかし仕事の実情を聞いていくと、会社がそのポテンシャルを最大限に伸ばす活かし方をしているとは到底思えない。加えて彼らのほとんどが大組織を離れることに恐怖を感じている。抵抗を撥ねのけるような突破力のある野心家は少ない。ベンチャーの有能な一員となって起業家を強力に支えることはできるフォロワーの適材は多いのだが……。
図表1は、ベンチャー企業が大企業などに協力して欲しい項目の調査結果である。ベンチャーが欲しいのは資金、技術、人材の順であり、大企業との協業が実現すれば、ベンチャーにとってかけがえのない支援になる。
イノベーションを実現するには「人が起点」
課題はベンチャーを率いるリーダーにもある。GAFAを見てもイノベーションは個性的なリーダーから生まれる。人から始まるのだ!
もちろん大組織の片隅に天才的な変人が眠っていることもある。彼がたまたま庇護してくれる経営者と出会って、イノベーションが起こった例はいくつもある。かつてのNHK人気番組『プロジェクトX』に登場したサラリーマンの物語のいくつかがそれだった。その偶然にも期待したいが、「革新は辺境から」というように、イノベーターは内部にこだわらず、広くオープンに探すべきだ。
要は「人が起点」ということである。しかも固有名詞で考えるべきで、21世紀型の基本的な人選のコンセプトは「一本釣り」だ。
そのためにイノベーターを発掘する意欲と覚悟、そして仕組みが要る。その仕組みのヒントは日本企業の典型ともいうべきトヨタ自動車、そしてソニーGにある、と考える。