今回は、15年以上連れ添った夫に不倫された40代の女性の事例を紹介する。なぜタブーは生じたのか。タブーのはびこる「家庭」という密室から、どのようにして抜け出すことができたのだろうか……。
多忙な夫との出会い
山陰地方在住の辻川結衣さん(仮名・40代)は、大学4年の頃、就職活動の忙しさの中、当時付き合っていた彼氏とすれ違いが続き、別れた。やがて就職先が決まり、大学卒業間近になると、何となく、友達の間ではやっている出会い系サイトをのぞいてみた。そして、そこで目に留まった1歳年上の男性とやりとりし、実際に会うことになる。
1歳上の男性は、明るく社交的な性格で、誰もがよく知る重工業系メーカーに勤務していた。辻川さんは、「多少、遊んでる感じがする」と思ったが、2人はすぐに打ち解け、水族館や遊園地などに出かけるデートを重ね、約2年後に結婚。ただ、夫には貯金がなく、結婚指輪を用意することができなかったため、辻川さんの母親が指輪を買う資金を出してくれた。
医療事務をしていた辻川さんは、結婚を機に退職し、その3年後には長男を出産。夫は出産に立ち会い、長男の誕生を心から喜んだ。
夫は仕事が休みの日は、オムツの交換や子供の入浴などをしてくれたが、夫の勤務先は忙しいことで有名な企業。平日は日付が変わるまで帰宅できないのは当然、出張や休日出勤もザラで、なかなか育児に関わることができなかった。
それでも夫は時間を作り、長男と2人で職場の家族イベントに出かけたり、長男が「釣りがしたい」と言えば道具をそろえ、一緒に釣りに行ったりした。また、小さい頃は鼻づまりがひどい子だったが、夫が自ら口で鼻水を吸い取り、献身的に看病したこともあった。
それから4年後、辻川さんは次男を出産。やはり夫は出産に立ち会い、2人目のわが子の誕生をとても喜んだ。多忙な中、夫は極力育児に協力し、数カ月に1回は、家族で動物園や遊園地、キャンプなどに出かけた。
そして、次男が生まれてから約1年後の2014年、33歳になった辻川さんは3人目を妊娠。ワンオペ育児が大半ながらも、穏やかな幸せを感じていた。