再構築

夫の不倫相手は、同じ職場の部下だった。セックス動画に加え、女性と会っていた証拠をつかんだ辻川さんは、夫と話し合いを重ねる。夫は「絶対に離婚はしない」と言って謝罪。辻川さんは、相手の女性に慰謝料を請求し、相手の女性の辞職を条件に、夫婦関係の再構築の話をした。だが夫は、相手の女性をかばい、どちらの条件にも首を縦に振らない。

それどころか、バレたことを機に自暴自棄になったのか、夫は辻川さんに暴言を吐き、暴力を振るうようになっていく。

「結果には原因がある。だから不倫した原因はお前にもあるんだ!」と責任転嫁は序の口で、パートを事務系からスーパーやコンビニに変えた辻川さんに、「学びのある仕事につけ。レジ打ちとか底辺の仕事はやめろ!」と、パワハラ・モラハラ発言は当たり前。恐喝・脅しは日常茶飯事に。

口論するカップル
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

夫は、不倫がバレてからはよく家で酒を飲むようになり、酔っ払った時など、辻川さんが不倫の話を蒸し返したり、家事育児を頼んだり、気に入らない言動をすると、妻を突き飛ばしたり床に押さえ込んだりした。

「当然のように人格否定されました。家事育児などでできていないことを指摘されたこともあります。“自分は一切何もしないのに”です。『同じくらい稼げるようになれば手伝ってやる』『俺の家だからお前が出ていけ』とも言われました。明らかに嘘だと思うようなことも平気で言っていました。『俺がいなくなったらどうする? 俺が必要なんだろ?』と言ってレイプまがいのことをしてきたこともあります。悲しくてやりきれなかったけど、自分には力がないと思っていたため、耐えるしかありませんでした」

辻川さんも負けずに言い返すが、腕力ではかなわない。いつしか腕や足には、あざや擦り傷がたえなくなっていた。

「夫はもう、私や家族への愛情がなくなったのだと思います。私のせいで不倫女に迷惑がかかったり、会社を辞めさせられたりする恐れがあるため、私が邪魔だったのでしょう。ただ唯一の救いは、夫は子供たちには暴言や暴力がなかったこと。私の育児に関してはうるさく口出しをしてきましたが、基本子供たちには無関心でした」

穏やかな暮らしは一変、家庭はDV現場となった。子供たちは父親を恐れ、言い争う両親の様子を、ただ不安そうに見ていた。

この先、辻川さんはどのようにして、この不毛な現状を打破したのだろうか。どのように家庭という密室から抜け出したのだろうか(以下、後編へ続く)。

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