10歳と5歳の子どもを持つ漫画家の田房永子さんは、最近テレビで見たパーソナルトレーニングジム「ライザップ」のCMについて「これまでのものは“非日常感”があり距離を置いて見ることができたが、今回のものは刺さりすぎて気まずかった」といいます。その理由は、「産後半年で骨盤を戻さないと一生デブ」という呪いに振り回された、初産以降の10年間にありました――。

「ずっと元気でキレイなママでいるから…」

テレビを見ていたら、小さな子どもを抱いた一般女性のスナップ写真とともに「走れない……。ついていけない……」と深刻なトーンのナレーションが入るCMが流れてきました。

つづいて同じ女性が生活感あふれる自宅で自分の体を自撮りした写真に変わり「公園で一緒に遊ぶのが大きな夢でした」とナレーション。

保険のCMかと思った瞬間、「91.2kgから44.5Kg」の数字が現れ、ゴージャスな水着姿の女性、谷さん(46)が登場。

RIZAP(ライザップ)のCMでした!

4歳くらいの子どもたち2人と抱き合う谷さん。

「約束するね ずっと元気でキレイなママでいるから」と女性の気迫のこもったナレーションが入って終わりました。

ライザップのCMは今まで、どちらかというとコミカルな仕上がりだったと思います。あからさまに暗~い顔した人が珍妙なサウンドに合わせて回りながら、ムキムキのボディを見せつけ割れんばかりの笑顔で別人のようになるという非日常感があって、「尋常じゃないスピードで結果にコミットしたい人たちの世界」って感じで距離を置いて見れました。

だけど今回のシリアス・ライザップCMは、私も10歳と5歳の子どもがいる母親として刺さり過ぎました。

ライザップのCMが流れた時
イラスト=田房永子

公園で走ると「足が埋まる」

たしかに走れない。公園とかで走ったら「あれ? 埋まってる? ここ沼?」って感じで自分の足が地面に埋まっていく感じがする。もともと走るの苦手だったけど、ちょっと前までは「なんか私の走り方ドスンドスンいってないか?」くらいで一応、地表の感覚はありました。だけど最近は「足が溶けてる」感じがする。子どもを追いかけてハツラツと走り回るスポーティーなママがまぶしい。

1人目を産んでからこの10年、産後にすごく言われる「出産でひろがった骨盤をこの半年で締めないと体型は戻せません!」から始まり、「育児で忙しいママは『ながら運動』でOK(赤ちゃんをダンベル代わりに!)」とか、人間ドックで「運動してください」って何度言われたか、って感じだけど、まったく「運動」を日常に取り入れられませんでした。

出産前は日常的に楽しんでいた唯一の運動(ヨガ)も、断続的にしかできなくてぜんぜんやらない時期が増えて、運動しない生活のほうに軸が合っていってました。

それでもいつも、常に「運動しなきゃ」に追い詰められていて、スポーツジムに入会しては2人目を妊娠して挫折、プールに通おうとして挫折、卓球クラブも挫折、ZUMBAもコロナになってやらなくなって、自分ってダメすぎる……と自己嫌悪しながらもまだ「運動しなきゃ(泣)」と思ってました。