母たるもの、得意料理がなければいけないのか。漫画家の田房永子さんは「私は得意料理がないことにコンプレックスを持っていました。しかしコロナ禍で自炊が増えたことをきっかけに『もういいわ、無理だ。私は料理は不得意だし好きじゃない』と認めたところ、前より料理が楽しくなってきました」という――。
自宅のキッチンで調理する女性の手元
写真=iStock.com/PeopleImages
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料理の腕は「後片付け」

いま話題の料理番組「DAIGOも台所」。タレントのDAIGOさんが「娘のお弁当を1人でつくれるようになる」を目標にかかげ、人生初のジャガイモの皮むきに挑戦したりします。料理初心者の男性タレントがぎこちなく料理に向き合っている様子って新鮮。最後に皿洗いと後片付けのシーンも入っているのが好印象過ぎて初回からネットでは絶賛の嵐でした。

料理って「食材切ったり、煮たり焼いたり」だけじゃない、その前後含めて、なんですよね!

食材調達→調理(ラクに後片付けができることを段取りしながらの調理)→後片付けがワンセット。もはや「後片付け」がいかに簡単にできるかが、料理という家事の腕じゃないですか?

学校では教えてくれない「段取り動線作り」

私はこの「料理の後片付けの段取り」がとにかく苦手で、うまくできないことがストレスでした。

子どもの頃、おばあちゃんの家で後片付けを手伝っていたから、その手順は知っている。だけど私が手伝う時は「祖母、叔母、私、たまに母」の3〜4人体制で、食器を洗う人と拭く人、片付ける人が同時にその場にいたわけなんですよ。わいわい喋りながら、楽しく、当たり前にすぐ終わる。でも実は食器一個にとってはすごく手間かけてもらってる、みたいな。

1人でやるのとぜんぜん違くないですか⁈

私は結婚して子どもが生まれてから引っ越しを2回したのもあって、キッチンの“段取り動線作り”がままならないまま過ごしていました。こっちにコンロがあるから、鍋を置いとくのはここ、とか、自分の動きに合わせて食器や調理用具の配置を決める、これって実は結構能力(才能)いりますよね……。

“動線作り”がみんな簡単にできるとは限らないのに、家庭科では教えてくれない。味噌の溶き方はやたら教わる機会があるけど、調味料のベストポジジョンは本当にここでいいのか、よく分からない。

「丁寧に暮らしている人の理想の台所」を紹介する本を何冊も買ってみました。でもストレスなく調理を行うことができなくて、「私は『後片付けの段取り』を改めて教わるべき人間なんだ」と思い詰めて料理教室に入会したことがありました。

調理の途中でこうしておくと後片付けがラク、とか、台ふきんはこのタイミングで洗って干す、とかそういう段取りをイチから教わりたくて!