歳を重ねれば、目指す目標を達成できなくなることもある。作家の松尾一也さんは「50代は今までトントン拍子で来た人ほど“人生の断崖”に直面します。転職を余儀なくされた時、それまでの仕事に固執すると道は断たれます。自分の賞味期限切れに気づかずに“まさか”の事態がしのびよることがある」という――。

※本稿は、松尾一也『50代から実る人、枯れる人』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

ビジネスの男性の窓を通して
写真=iStock.com/mamahoohooba
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自分の人生に関心がない人は自分が今どこにいるかわからない

実る人今、どのステージにいるかを見つめ直す
枯れる人自分の人生に関心がない

その年齢でしか見えない風景があります。

5歳の頃に、繁華街の明かりを見てもなんの魅力も感じません。いつも母親の背中を追いかけていました。

20歳の頃には遊びが最大の関心事でレジャー施設に目が奪われます。

30歳の頃には、自分の人生の伴侶(パートナー)候補の異性に目がいっています。

40歳の頃には同世代の仕事ぶりや暮らしぶりが大いに気になります。

そして50歳。社会の風景とのピントが合いだして、やっと様々な実相が見えてくるのです。

「なんと人生とはこのような仕組みだったのか……」

50歳で初めて世の中がクッキリ見えてきて、愕然がくぜんとするものです。

これは「悟る」ということではなく、「生活」に追われる日々の中で「人生」というものにようやく気づくという感覚です。

50歳になると習慣のギアが変わりだすことを否応いやおうなく思い知らされます。

「そんなに食べたつもりはないのに太りだす」
「お酒をたくさんは飲めなくなる」
「白髪が増えてくる、髪が薄くなる」
「通勤がしんどくなる」
「徹夜が出来なくなる」
「親の介護や見送る日を経験する」

また、手放すものもたくさんある一方で、手に入れるものもあります。

「仕事の経験や醍醐味」
「心のやすらぎ」
「家族や友人のありがたみ」
「食べ物や景色の深いあじわい」
「生きる意味」

そうしたなかで「自分」という生き物が実っているのか、それとも枯れつつあるのか、はっきりしてしまう年齢が50歳なのです。

今、自分が人生のどんなステージにいるのか、50歳を機に冷静に見つめ直すことが大切です。