アリゾナ記念館は、真珠湾攻撃は日米両国がそれぞれの国益を追求した結果起こったものである、としているのです。つまり、日本を「侵略国」であると決めつけた東京裁判を事実上否定している、ということです。

いまや日本が一方的に戦争を仕掛けたという議論はなくなり、様々な背景があって戦争になったわけであり、日本を一方的に批判するような展示は変えるべきだというのがアメリカ国立公園局、歴史学者達、アメリカ軍、そしてハワイ州政府の四者協議で決まったと聞きました。

日本では敗戦後、ずっと日本は真珠湾攻撃でだまし討ちをした悪い国だ、みたいな歴史観をもってきたのですが、相手のアメリカはとっくの昔に、そうした歴史観とは異なる見方を打ち出し始めているのです。

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写真=iStock.com/Douglas Rissing
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ヴェノナ文書の公開による近現代史の見直し

そして、この近現代史見直しを加速させているのが、ヴェノナ文書の公開なのです。

ヴェノナ文書とは、アメリカ政府の国家安全保障局(NSA)、連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)によって公開された機密文書群のことで、一九四〇年から一九四四年にかけて在米のソ連のスパイたちが本国と暗号電文でやりとりしていたものを、当時のアメリカ陸軍が傍受し、FBIやイギリス情報部の協力を得て解読されました。

ヴェノナ文書の研究書である『スターリンの秘密工作員』は、「真珠湾攻撃の背後にソ連の工作があった」として、次のように指摘しているのです。

《ソ連による政治工作は、ソ連が我々の同盟国であり、反共防護措置が事実上存在しなかった第二次世界大戦中に最も顕著であった。これはぞっとするほどタイミングが良かった。親ソ派の陰謀がアメリカの参戦に決定的役割を果たしたのだから。この意味で注目すべきなのは、真珠湾攻撃に先立って共産主義者と親ソ派が行った複雑な作戦である。この一九四一年十二月七日の日本軍の奇襲攻撃により、二千人以上のアメリカ人が生命を失い、アメリカは悲惨な戦いを始めることになったのである》(山内智恵子訳)