1941年12月8日の「真珠湾攻撃」から80年の節目を迎え、新聞やテレビは大きく報じた。評論家の江崎道朗さんは「日本のメディアは従来のまま“卑怯な騙し討ち”としているが、アメリカでは機密情報が開示され、歴史の見方は変わっている」という――。
※本稿は、江崎道朗『日本人が知らない近現代史の虚妄』(SB新書)の一部を再編集したものです。
「真珠湾攻撃の日」を日本のマスコミはどう報じたのか
二〇一七年十一月三日、アメリカ大統領だったドナルド・トランプがハワイ・真珠湾のアリゾナ記念館を訪問した後にツイッターで「Remember Pearl Harbor(真珠湾を忘れるな)」とつぶやいて話題になったことがあります。
日本のマスコミは、トランプは「日本の騙し討ちを忘れるな」という言葉を使ったのだ、と受け止めていましたが、この「リメンバー・パールハーバー」の意味合いもアメリカでは大きく変わってきています。
真珠湾攻撃から八〇周年を迎えた二〇二一年のマスコミ報道も、この言葉を相変らずの意味合いで使い続けました。しかし、歴史は常に見直され続けています。本稿では、アメリカで真珠湾攻撃がどう論じられ、見直されてきているのかを紹介したいと思います。
一九四一年十二月八日(現地時間は七日)、日本軍が真珠湾攻撃をした当時は、それは確かにアメリカにとっては「卑怯な騙し討ち」でした。
ところが一九四八年、アメリカの著名な歴史学者チャールズ・ビーアド博士が『President Roosevelt and the Coming of the War, 1941: A Study in Appearances and Realities』という本を刊行します(邦訳『ルーズベルトの責任』藤原書店、二〇一一年)。
この『ルーズベルトの責任』によって、「時のルーズヴェルト大統領は暗号傍受により日本軍による真珠湾攻撃を知っていたのに、対日参戦に踏み切るため、わざと日本軍攻撃のことをハワイの米軍司令官に知らせなかった」という「ルーズヴェルト謀略論」が登場します。
その後もアメリカでは真珠湾攻撃についての議論が続きます。