中国には年間売上が5000億円を超えるインフルエンサーがいる。マーケッター/プランナーの藤井直毅さんは「ライブコマースの女王と呼ばれている薇婭は、多いときで4000万人の視聴者を集めている。8億円のロケットを販売したこともあり、売上規模はフジテレビ以上だ」という――。(第1回)

※本稿は、藤井直毅『新消費 デジタルが実現する新時代の価値創造』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

中国のトップインフルエンサー薇婭、中国の俳優Qian Feng、歌手の張大奕などのスターが、中国南西部の雲南省昆明市の斗南花市場で農民を支援する湖南テレビ「日日上」(2020年5月8日)の収録に参加。
写真=Imaginechina/時事通信フォト
中国のトップインフルエンサー薇婭、中国の俳優Qian Feng、歌手の張大奕などのスターが、中国南西部の雲南省昆明市の斗南花市場で農民を支援する湖南テレビ「日日上」(2020年5月8日)の収録に参加。

誰もが知る人2人のカリスマ販売員KOL

ここから紹介するのは、中国の若者なら誰でも知っている、2人のカリスマ販売員KOL(*1)だ。

時系列で有名になった順番に紹介していく。まず、いわゆる一般的なECで成功したモデル出身の張大奕ジャンダーイー、ライブコマースの女王・薇婭ウェイヤは、それぞれ少しずつ活躍の時期や場所が異なり、成功の方法論も違う反面、カリスマであるからこその共通の悩みも抱える。それらを比較することを通してKOLとECの関係を見ていただければと思う。

最初に登場する張大奕は、ライブコマースより前、図文電商(写真と文章を使った伝統的なEC)から生まれたスターだ。2009年頃から雑誌や淘宝タオバオショップのモデルを務めていた彼女は、そのビジネスパートナーのひとりに誘われ、2014年7月に自らも投資したブランドを立ち上げる。

翌2015年の双11セールでオープン1年という短期間にもかかわらず1億元(≒18億円)の売上をあげ、彼女自身も2015年の中国KOLランキングの9位に選ばれた。翌2016年の双11では、女性ファッション分野の売上トップ10にも入った。

(*1)Key Opinion Leader の略称で「多くの人に影響力を与える人」、日本では「インフルエンサー」と呼ばれる存在とほぼ同じだ。