2012年、米国と中国の関係は緊張と対立の新たな段階へ突入する。

11年は、過去10年間の対テロ戦争を通じて中東とアフガニスタンに国家の資源を投入してきた米国が、「アジア太平洋への回帰」を宣言して、大きな戦略的シフトを印象づけた年だった。

11年末までにオバマ政権はイラクからの米軍全面撤退を完了させ、アフガニスタンからも1万人の米軍を撤収させた。未曾有の財政難から大幅な国防予算の削減を余儀なくされる米国にとって、これ以上の大規模な派兵は維持できず、対テロ戦争を終結させて限られた資源を国内の経済立て直しにあてるつもりだ。

しかし、この国防費削減の大きなトレンドの中にあっても、オバマ政権は豪州に米海兵隊を本格的に駐留させる計画を発表するなど、アジア太平洋地域の米軍のプレゼンスを強化する姿勢を打ち出している。

この背景に、中国の台頭に対する米国の懸念と警戒があるのは間違いない。日本とも馴染みの深いリチャード・アーミテージ元国務副長官は筆者のインタビューに対し、「オバマ政権はもはや中国と『友人にならなくてもいいのだ』という姿勢に転換したのだ」と説明した。

オバマ政権は誕生以来、中国との協調を目指して戦略的な対話を繰り返してきたが、そうした対話を通じて友好国になる道はもう諦めたのだという。

「中国に気を使うのはやめて、自分たちのやり方でアジア太平洋地域に関与していく意思を示したのだ」と同氏は述べた。

今年は各国トップの選挙・交代ラッシュ。今秋の中国国家主席就任が確定済みの習近平氏(写真左)と、再選が不安視されるオバマ米大統領。(写真=PANA、ロイター/AFLO)

11月13日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)開催後の記者会見でオバマ大統領は、「アジア太平洋地域の指導者たちは、中国が成長しその経済的影響力が増すに従い、中国が世界経済に責任のある指導者になることを期待したでしょう。それは米国が試みてきたことでもあります。つまり、米国は普遍的なルール、誰もが従うことのできるルールを設定することに努めてきたし、我々自身もそのルールに従います。そのうえで激しく競争をするのです。しかし我々は、システム自体を操作することは決してしませんでした」と述べた。中国はそうした普遍的なルールをつくる責任ある大国としての役割を果たさず、ひたすらシステムを操作して自分たちだけが利益を得ている、として強く中国を批判したのである。