東京大学地震研究所の平田直教授らがまとめた「東京付近でM(マグニチュード)7クラスの直下型地震が4年以内に起こる確率は70%」という試算は、首都圏の住民に大きな衝撃を与えた。
新聞、テレビはこのニュースを大々的に報じ、その後も夕刊紙はほぼ連日、週刊誌も毎週のように地震特集を組んでおり、報道だけみていれば、今にも首都直下型大地震が起きそうな雰囲気だ。
平田教授らによれば、昨年3月11日の東日本大震災の後、南関東ではM3.6クラスの地震の数が震災前の5倍に増えているとのこと。今年1月28日にも山梨県東部・富士五湖を震源地とするM5.5の地震が起きたばかりとあっては「気にするな」というほうが無理。何しろ確率7割なのだ。
政府の中央防災会議は、東京湾北部を震源としたM7.3の「東京直下型地震」が起きた場合の被害について、死者1万1000人、建物の全壊・火災焼失が85万棟、避難者は最大700万人と想定している。だが、この想定については、以前からあまりに現実離れしているとの批判が専門家から出ていた。
同じ直下型地震だった阪神・淡路大震災と比較すると、阪神・淡路大震災はM7.3。死者は6433人だった。死者のほとんどは建物の倒壊や家具の下敷きによる圧死だったが、これは地震が発生したのが午前6時前だったことが関係している。つまり電車はほとんど走っておらず、駅や地下街といった人が密集する場所に人の姿はほとんどなかった。
「だが、もし出勤ラッシュ時に、首都圏でM7クラスの直下型地震が起きたら、新幹線や在来線、地下鉄、高速道路などで事故が続発し、地下街などの人口密集地では大パニックが発生する。とても中央防災会議の想定のような少ない被害で収まるはずがない」と専門家は話す。
では、どう備えるか。新幹線や電車の事故など家の外で事故に巻き込まれた場合は防ぎようがない。「結局のところ、自宅で圧死しないように家具を固定するなどの対策を取るのが最善の方法」(同前)との指摘もある。
ちなみに東大地震研は、首都直下型大地震の可能性について、昨秋に「30年以内に98%の確率で発生する」という試算を発表済みで、実は、「4年で7割の確率」はその“言い換え”だという。そう考えれば少しは気が楽かも。