「20年前、30年前であれば、中国人がルールを破ったとしてもどうということはなかったのですが、今となってはそういう時代とは違うのだということを、彼らは理解すべきなのです」

オバマ大統領はこう付け加えて、「これ以上中国人のルール違反は許さない」という断固たる態度を見せたのだ。

米国人の目には、中国が独自のルールを設定してアジアで勢力を伸ばしていると映る。だから米国はこの地域で自由貿易体制を維持し、これまで米国が築き上げてきた仕組みを守って、これからも発展していこうと考えている。

南シナ海の航行をめぐる問題や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題も、根底にあるのは、新たなゲームのルールを設定して米国排除を目指す中国と、これまでのルールを守ってそれを阻もうとする米国という二大超大国のせめぎ合いに違いない。

12年は、いよいよアジア太平洋を舞台にこの両国の対立が先鋭化すると考えられるのである。

しかし、11年末に新たな事態が発生して、この米中関係をさらに複雑にしている。いうまでもなく金正日総書記の死去に伴う北朝鮮情勢の変化だ。

米国も中国も朝鮮半島の不安定化は望まないという点では利益を共有する。北朝鮮が暴発したり、内部崩壊しないように、米中が協力する可能性がある。少なくとも、米国が北朝鮮の内部情報に関して中国に依存しなくてはならない事態となりそうだ。

しかし、一方で米国は、金正恩新体制下の北朝鮮が中国の完全な支配下に置かれることを望まないし、何よりも北朝鮮の核兵器や核物質の拡散を懸念している。そうした事態が発生した際には、米国は単独もしくは韓国と協力して行動し、中国との対立を深めることになろう。

北朝鮮情勢の展開次第で、米中が協力を余儀なくされるか、もしくは逆に対立をさらに深める事態に発展しかねない。

12年、米中の狭間にある日本は、危機のたびごとに、米国、中国との関係調整に右往左往することになるだろう。

(写真=PANA、ロイター/AFLO)