「汚い部屋」の基準がズレていることで起こる不幸

そして妻は翌日「自分基準」で部屋を掃除しておくのだが、夫はそれでもまだ文句がある。

「おいおい、何でテーブルの下にモノがあるんだ? オレは床にモノが放置されているのが大嫌いなんだ。片付けって、視界に入らないようにすればそれで終わりってわけじゃないからな!」

ここまでくると、妻もキレる寸前であろう。「この男は私にいちゃもんをつけたいだけなのではないか」「そんなに汚いのが気になるのであれば、自分でやればいいでしょ?」「私が『そこまで丁寧にやる必要ナシ』と考える掃除まで要求されるのは理不尽」「いくら自分は会社で仕事をしているからといって、掃除をすべて私に押し付けて、毎日完璧にこなせと要求してくるなんて、コイツは鬼か」といった調子で、夫に対するさまざまな悪感情が渦巻くに違いない。

丹念にテーブルを消毒する女性
写真=iStock.com/insjoy
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「耐えられないもの・嫌いなもの」のレベルが異なると、かような衝突が起こってしまうのだ。きれい好きの夫は「オレはカネを稼いできているのだから、家にいるお前はせめて掃除くらいちゃんとしろ」と思うのだが、妻は部屋が雑然としていてもまったく気にならないし、とにかく掃除が苦痛で仕方がない。そうして妻は「きれい好きってウザすぎる!」「もう耐えられない。離婚したい!」となり、2人の結婚生活は終わりを告げることになる。

さまつな事柄も放置すればケンカのタネになる

こうして“きれい好き男”にこりごりした女性は、これから交際する相手を選ぶ際に「部屋を片付けなくても文句を言わない男」「マメに掃除をしなくても不機嫌にならない男」という条件を加えることになるのだ。当然ながら、これは男性の場合も同じである。過去に“きれい好き女”からさまざまな苦痛を与えられた経験を持つ男性は、二度とそんな女性とは付き合わないとかたく心に決めている。そんな2人が出会えば、距離は急速に縮まるだろう。生活を共にすることになっても、「汚い部屋が気にならない」という点で価値観が一致しているので、余計な衝突は起きない。これにて円満カップルの誕生である。

この手のもめ事は他にも数多く起こり得る。「箸の使い方が汚い」「店員に横柄」「見栄のためにブランド品を買う」「無添加食材しか受け付けない」など、カップルのあいだではさまざまな考え方の相違が見られるものだ。

「箸の使い方」程度であればひとまずスルーするか、「正しく持てるほうが行儀よく見えて、好感度も上がるだろうから、人生で得するかもしれないよ」と矯正を促すことができるかもしれない。ただ、他の3点については生まれ持った気質や、成長過程で親や周囲の人々から継承し、性根に染みついてしまった価値観も多分に影響していると思われるので、意識を変えるのはなかなか難しそうだ。

こうした「一見さまつなことかもしれないが、互いの認識がズレていると徐々にストレスがたまっていく事柄」については、配偶者やパートナーを選ぶとき、過剰なくらい目を向けておくほうがいい。交際時期に「ん? 何だか気持ち悪い」「妙な感じがする」などと違和感を少しでも覚えたときは要注意だ。いまは大した問題ではないように見えても、一緒に生活するようになると、その違和感はどんどん大きくなっていく可能性がある。とくに「耐えられないもの・嫌いなもの」に関する価値観のズレは、生活を共にするようになると確実に衝突のタネになるので、ぜひ擦り合わせておきたい。