「子どもの有無」や「親の介護」などデリケートな事柄ほど率直に

「【4】人生の重要事項について率直に話し合い、意識を擦り合わせておくことができる」に関することでいうと、われわれ夫婦は結婚前の同棲段階で「子どもは持たない」という重要な決定をした。

「子どもの有無」「年収が低下しても許容し、相手を追い詰めない」「実家の親はできるかぎり、自分たちで介護する。何でも業者任せにしない」「子どもは大学まで行かせる」「絶対に都会に住む」「将来的には田舎で暮らしたい」など、人生設計に絡む重要事項については、多少聞きづらいことであってもあらかじめ意識を擦り合わせておこう。相談は、早ければ早いほどいい。早いうちに決めておくほうが、年を重ねた後に「そんな考えだったとは知らなかった」などともめずに済む。

われわれ夫婦は「子どもは持たない」「生活する場所は東京にこだわらない」と早い段階で決めていたため、いま暮らしている佐賀県唐津市への移転もすんなり進められた。子どもがいないので気兼ねなく仕事を整理できたし、さまざまな準備もフットワークよく進められた。要するに、私たちは「子どもがいる暮らしより、2人で過ごす時間を大切にする人生」を選択したということだ。そのおかげで、自由気ままに移転を決断できたのである。

子どもを持たない人生を選んだことに、後悔は一切ない。それは、妻も同じである。現在30代後半の妻に対して「まだ産もうと思えば産める年齢だし、1人くらいは産んでみたら?」などと助言する人もいるのだが、彼女は「いや~、これから産むのは大変ですよ。もういらないです」と何の含みもなく返している。私も「仮に来年子どもが生まれたとして、その子が成人するとき、オレは69歳ですよ。そこまで働き続ける気力はないです」と答えている。

デリケートな事柄だからこそ、早い段階で率直に意見を交わし、考えを一致させておいてよかったと思う。おかげでいま、われわれ夫婦の関係性はとても安定しているし、一緒に過ごしていてすこぶる快適なのである。

「趣味」は違っても大きな問題にはならない

さて、ここまでは「2人の価値観をできるだけ一致させておくほうがよい」事柄について書いてきたが、「【5】趣味は一概に同じでなくても構わない。相手の趣味は互いに尊重する」は少し毛色が異なる。趣味は互いに束縛しあってまで楽しむようなものではない。「あなたはコレが好き。私はソレが好き」でも別に関係は悪化しないから、同じ趣味にこだわる必要はないのだ。

ロックダウン中にシンセを弾く夫とPCに向かう妻
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たとえば、鉄道好きと飛行機好きが結婚したとしても、日ごろはソロ活動で楽しめばいいし、旅に出たときは同じ時間を共有しながら、それぞれの興味を満たすことだってできるだろう。漫画好きとゲーム好きも同様で、2人で同じベッドの上に寝転んだり、一緒に移動したりしながら、各々の趣味に没頭すればいいだけだ。もちろん、同じ作品が好きで一緒に「聖地巡礼」などをするのもいいだろうが、趣味というものは思想や主義主張より圧倒的に軽いものなので、違っていても仲違いをするほどの障害にはつながらない。