保険は死亡や病気に備えた「不幸くじ」

では、この生命保険という、命や病になる確率を賭けた「不幸くじ」の還元率はどれくらいなのでしょうか?

宝くじの還元率は、46.5%で半分以下と低く、パチンコは還元率80〜85%といわれておりギャンブルとしては高い還元率です。

保険の還元率は、商品や加入者の年齢、性別によっても違いますが、「当たればもらえ、当たらなければもらえない」という意味では一種のギャンブルで、一般的な生命保険だと、還元率はそれほど高くありません。

保険会社は、売る保険の中に、死亡したり病気になって入院した時の保障費用のほかに、収益や維持費、運営費、広告費などを織り込んでいます。運営費の中には、保険加入の契約を交わした営業販売員の給料と歩合なども含まれています。

保険は、加入者間の公平を期すために、同じ年齢、同じ性別の人でグループをつくり、その中でその年に死んだ人や病気で入院した人に、みんなが支払った保険料(純保険料)が行き渡る仕組みになっています。

日本人が死亡したり入院する確率はみんな同じですから、同じ保障の保険なのに保険料が違うというのは、保障の費用に上乗せされる、保険会社の経費比率が違うのです。

もちろん、商品は認可制なので9割が経費などというとんでもない商品は作れませんが、短期間で低い保障のものだと半分が経費というものもあります。保険会社は経費率を開示していませんが、一般的には同じ保障でも、経費がかからないネット保険は安く、人件費がかかる勧誘型で売る保険は高くなっています。

生命保険は死亡保障を減らす

自分が亡くなったとき、残された家族が生活に困らないように入るのが生命保険の死亡保障です。ですから、養う家族がいない独身の人は、生命保険で死亡保障を確保する必要はありません。自分が死んだ後に保険金をもらっても、自分では使うことができないからです。

また、家族がいても、妻が働いてそこそこに稼いでいるという場合にも、保険金を残す必要はないでしょう。例えば、夫が亡くなった妻は悲しみに打ちひしがれるでしょうが、やがて悲しみが落ち着けば、また立ち直って生きていくだろうし、もしかしたら再婚をするかもしれない。

残された妻が専業主婦の場合も、サラリーマンの夫が死亡して幼い子どもと残されたら、後述しますが、食べていくくらいの遺族年金は子どもが18歳になるまで出ます。

ですから、残された家族の生活については、それほど心配する必要はないでしょう。

問題は、生活するのにはそこそこ大丈夫でも、子どもの教育費までは手が回らないケースです。子どもは放っておいても勝手に育ちますが、進学したいときの教育費だけは準備しておきたいもの。

高校・大学に行くには一人1000万円かかるので、子どもが大学を卒業するまでは死亡保障のみのシンプルな掛け捨て保険で、子ども一人につき1000万円を保険で備えればいいでしょう。

医療費はさほどかからない

病院は患者の回転率を上げなくてはならないので、病気になっても長期の入院をさせてはくれないのはご存じの通り。患者にとっても働きながら治療をするのが理想です。

しかも、「病気になったらお金がかかる」とは、単なる思い込みです。

そもそも日本人は全員健康保険に加入しているので、病院で手術や治療を受けても自己負担は3割です。さらにその3割がいくらかさんでも、高額療養費制度があるので、一般的なサラリーマンなら医療費は月9万円程度です。

会社を休んで収入が減るのが心配だという人もいらっしゃるでしょうが、病気で会社を休んでいる間は最長1年6カ月の間、給料の3分の2を支給してもらえる傷病手当金があります。

このように病気やケガに関しては、手厚い社会保険があるので、民間の医療保険に加入してわざわざ保障を上乗せしなくてもいいかもしれません。