味の素のタイに当たる拠点が、「ベープ」で有名な殺虫剤大手フマキラーのインドネシアである。
同社がインドネシアに進出したのは、90年で、すでに20年の歴史を持つ。
「インドネシアの人口は、約2億2800万人。それにほぼ赤道直下の国で蚊も多い。インドネシア国中の蚊を集めて飼育し、生態観察から薬効テストまで行った。そこでわかったことは、インドネシアの蚊は薬剤に対する抵抗力が、なんと日本の蚊の5倍も強いということ。年間を通して殺虫剤の需要がある」(フマキラーインドネシア社長・山下修作)と踏んで、進出を決断した。
フマキラーインドネシアは、このところ現地通貨ベースでは増収増益を続け、世界各国へ輸出する生産拠点の役割も、担うようになっている。しかし、ここまでの道のりはやはり平坦ではなかった。
インドネシアは1万7000もの島嶼から構成されている。フマキラーの進出当初、首都があり、最大の人口規模を誇るジャワ島は、すでにグローバルメーカーとローカルメーカーがひしめく激戦区だった。
最後発に属するフマキラーは、比較的競争が緩やかなジャワ島以外から攻略を開始する。00年ころまでは、ジャワ島以外のマーケットの開拓期。続いて、このエリアでシェア・ナンバーワンになることを目指し、08年ころまでに、これをほぼ達成した。
主力は線香。1箱にダブルコイル(2巻ワンセット)が5つ入っているが、売れ筋はワンダブルコイルである。この価格は500ルピア、日本円で5円程度。消費者は少額で日々必要な分だけを買う。
ここでもチャレンジングな課題は、流通網と販売店をどう確保するかである。インドネシアでは地元の卸売り業者の下に「グロシール」と呼ばれる中間卸が入り、さらに「ワルン」と呼ばれる極小小売店に商品が流れる。ワルンは、全国で230万軒、グロシールはおそらく1万から1万5000軒くらいあるという。卸売り業者は華僑が中心だ。