世界最大の流域面積を誇る、ブラジルの大河アマゾン。マナウスは、その河口から、上流へさかのぼること、実に約2000キロに位置する。ブラジルにおける二輪車の生産拠点であるモトホンダ・ダ・アマゾニアが居を構えるのは、このマナウスだ。ホンダがここで二輪車の生産を開始したのは、30年以上も前の76年。いまやホンダ・アマゾニアは、従業員約1万人を擁する大工場に成長した。

ホンダの海外進出の定石は、まず二輪車で市場を切り開き、四輪車を展開するというパターンである。ブラジルの場合、ヨーロッパの影響を受けて、二輪車市場よりも、四輪車市場のほうが大きいというのが特徴である。二輪車はアウトローの乗り物というイメージさえ持たれていた。その意味では、ホンダが二輪車のイメージを変え、市場そのものをつくりあげてきたともいえる。08年で見ると、二輪車の登録台数191万台のうち、ホンダは実に132万6000台。シェアは約70%と圧倒的である。

ホンダはどのようにして、この地位を築き上げてきたのか。ブラジル駐在の南米本部長・峯川尚は「先輩たちをはじめ、コツコツ、コツコツやってきた歴史の成果」だと繰り返す。なかでもホンダが注力してきたのは3つ。現地調達比率の引き上げ、ブラジルに合った商品開発、そして売るための仕組みづくりである。

ホンダがマナウスを選んだのは、同市が自由貿易港であり、税など産業政策上の優遇策も大きかったため。ただし、ホンダの苦労もまたここから始まった。周辺には部品工場などはない。このためマナウス工場の一大特徴は、部品の内製化比率が高いことにある。「要は、部品メーカーさんが出てくるほどの規模じゃない。そうすると自分たちで作んなきゃいかんということで、いまでもですね、例えば、オートバイのシート、それからホイールなどを鉄から曲げていって、最後メッキまでして加工する。あと、オートバイのマフラーも。これはもうまったく別世界ですよね。ほかのホンダの工場と比べますと」(峯川)