ブラジル政府は現地の雇用を創出するために、部品の現地調達比率規制を強化してきたが、部品の内製化はこの規制をクリアするのにも役立った。いまや現地調達比率は、売れ筋の車種で約95%にまで達している。
もう一つが商品開発である。「お客さんの使い方が、ヨーロッパ的で、ガンガン乗り、とことん乗り回す。さらに路面は、ヨーロッパよりもっとガタガタする石畳が多い」(峯川)。ホンダは耐久性の高い車種を開発し、これが消費者の高い評価を得て、二輪市場の拡大に貢献している。
所得が増えてきたとはいえ、ブラジルの庶民にとっては、二輪車はやはり高級品だ。そこで、ホンダは販売方法にも工夫を凝らした。それが「コンソルシオ」。日本の「無尽」である。60人が一組となって、毎月一定金額を積み立てる。毎月抽選をして、当たった加入者が二輪車の購入代金のファイナンスを受けられるという仕組みだ。
このコンソルシオは、日系のブラジル移民が持ち込んだのではないかとも言われており、もともと地場にあったもの。ホンダがこれに着目して、バイクの購入専用に組織化した。「一時、状況が厳しいときには、これが全体の半分以上を占めるくらいの販売量になりました。いまでも3分の1くらいが、コンソルシオ系の販売でしょうか。これは将来の販売が約束されているようなものです」(峯川)。
二輪車で稼ぎだした収益をテコに、ホンダはいま四輪車市場に打って出ている。生産開始は97年、現在の主力車種は、世界共通車であるシビックとフィット。
四輪車市場では50年代から進出しているドイツのフォルクスワーゲンを筆頭に、イタリアのフィアット、米国のGM、フォードの「ビッグ4」が8割以上のシェアを押さえている。
ブラジル市場や都市の特徴は、政府がワンリッターカーを推奨してきたこともあって、小型車中心であり、シビック、フィットでも大きいという。「最大のマーケットである小型車のところで、まだ我々としては答えを出してない。そこのところが我々の次の課題です」(峯川)。
ブラジルの四輪車(乗用車と軽商用車)市場は、現在約300万台。近い将来、日本市場並みの400万台になると予想される。ホンダにまた新たな決断のときが迫っている。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時