福岡に拠点を置く太陽光発電・蓄電池の訪問販売会社・新日本エネックスは、2019年まで次々と社員が辞める会社だった。離職率は8割に達していたという。ところが、社員の働き方を見直した結果、離職率は5.4%にまで下がった。船井総合研究所のウェブメディア「社長online」から紹介する――。
多くのビジネスマンが同じ方向へ進んでいる
写真=iStock.com/metamorworks
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「離職率8割」を5.4%に激減させた秘策

人手不足かつ、転職・起業も容易になっている昨今、「社員に自社に働き続けてもらうこと」は今の時代の経営が抱える課題の1つと言える。特に訪問販売という業態は、離職率が高く、人材の流出が激しい。

そんな業態にあって、同業他社に比べて異例と言えるほどの低離職率を実現させた会社がある。福岡市に本社を置く新日本エネックスだ。一時は8割に上った離職率は、現在、5.4%にまで改善。会社の業績上昇に合わせて営業担当者は常時増やしているが、退職者は少なかった。

同社は、太陽光発電・蓄電池システムやオール電化製品などを訪問販売している。営業所は九州のほかに中国地方や東京など4カ所にあり、営業担当者は約60名在籍している。2015年の設立以来、業績は好調に推移し、2020年の売上は前期実績の約2倍となる21億円を記録した。

テレビCMや地元福岡のスポーツチームへのスポンサードなども行っており、コロナ禍でも数字を伸ばしている。アジア太平洋地域13カ国、100万以上の企業を調査対象とした「High-Growth Companies Asia-Pacific 2021」(アジア太平洋地域の急成長企業ランキング 2021)で48位にランクイン、日本の企業では6位に入る急成長企業だ。

船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)
船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)

訪問販売の多くは「成果報酬」だ。売れば売るほど報酬が増える、非常にわかりやすい形態である反面、売れずに苦戦する人も多く、数字を伸ばせず離職する人も多い。働く人も、自分の腕一本で稼ぎたいと考えている人がほとんどで、稼げればそれでいい、稼げなくなったらほかに行く、という感じで、会社への帰属意識は低かった。

社長の西口昌宏氏はその状況を根本的に変えた。具体的には、これまで重視してこなかった「社員満足度」を上げる取り組みを進めた。研修やシフト勤務を取り入れ業務の一環として花見やBBQなどの社内行事を設けた。成果主義を見直し、営業成績一辺倒の完全成果報酬型給与体系をやめた。その結果、大幅な離職率の改善につながったと言える。