採用面接で「辞めない人材」を見極める

西口社長が最初に取り組んだのは、採用面接の方法だった。バラバラだった社員を一つにするには、価値観を共有できる人に入社してもらうのは一番だからだ。創業から3年ほど経った2019年ごろから共感重視の面接に切り替えた。ポイントは以下の3つだ。

1.包み隠さず会社の内情を伝える
2.前職の悩みを聞く
3.社長がビジョンを話して面接者の目が輝くかを見る

一般的に、訪問販売、歩合制営業の採用は、焦点が「何を売るか」「どのくらい報酬を払うか」が中心で、それ以外の部分をあまり重視しない傾向にある。だが、新日本エネックスは、入社前に会社に関する説明を徹底的に行う。

「入社前に言っていたことと実際が、会社に入ってみて違うとなったら、まず不信感が生まれますから、それをなくすことが大事です。面接は最低でも2~3回行い、新卒採用では5回くらいします。表面的な話にとどまらず、会社内部に深く関わってもらうことが大事にしている点です。求職者には社風や理念の説明のほか、実際の営業体験などをしてもらい、外から見ての姿と中で働いての実際の姿を一致できるようにしています。面接では“ぶっちゃけトーク”もしています。会社にしてみれば言いたくないようなこともすべて伝え『このような会社ですが、入ってもらえますか?』という合意形成をしっかり行います」(西口氏、以下同)

就職面接を待つ人々
写真=iStock.com/BartekSzewczyk
※写真はイメージです

最低でも2~3回、面接で3時間ほど向き合うことも

面接では伝えると同時に「聞く」も重視しているという。

「中途入社が8割の会社なので、全員が新卒の会社に比べれば、統一の価値観の形成は難しい部分があります。そのため、中途入社の人に対し重視するのは素直さです。中途入社の人は、それまで勤めた会社でのやり方がその人の働き方の基本になっているものです。それは構いませんが『前の会社ではこうだった』とそのやり方に固執されても困るので、今までのやり方を変えられるかをしっかり確認します。『やり方を変えられるか』と聞いても、全員が『変えます』と答えるに決まっていますから」

採用面接で、西口氏は志望者から前職の悩みを聞く。理由はこうだ。

「面接で聞いているのは、前職で抱えていた悩みです。それをじっくり聞くと、その人の考え方がわかります。『自分が力を発揮できないのは、それまで勤めていた会社が悪いから』という前提に立って考えていないか、は大事にしています。周りのせいにせず、自分が変わる意欲がある人は、新しい会社のやり方を身につけてくれますから」

「悩みを聞きながら、これからその人がどんな人生を歩んでいくのが望ましいか、悩み解決や夢や目標の設定を、それこそ個人コンサルにつくくらいの感じで、時間をかけて行います。そのような感じなので、面接は1回で1時間は必要で、長いと3時間くらいすることもあります」