あえて研修を重視する社長の狙い

新日本エネックスの特徴は、研修の機会が多いことだ。2020年ごろから社内の研修プログラムを整備した。「研修など受けているヒマがあったら1件でも多く営業に行け」という考えが一般的な業界において、例外とも言える。そこにも西口氏の考えがある。

「社員が会社に勤めることで得られるものは給与以外にも、スキル、マインドなどたくさんあります。本人たちがその会社に勤めることで、本来ならば高額のお金を払わなければ得られない研修を受けられれば、満足につながると考えました。もちろん研修ですから、その内容を営業やマネジメントに生かしてもらいたいと思っています。『社員みんなの人生においてこういう知識、スキルが必要と思う』という研修を、私が選んで受けてもらっています」

研修を受ける社員たち
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「先日は、元福岡ソフトバンクホークスの選手が、野球選手という人生の夢を終えて、新しい夢を見つけるためにどのようなことをしたか、どう考えを変えていったか、を話す研修を受けてもらいました。何かしら夢をあきらめてわが社の社員になっている人もいるので、どう今の仕事に向き合うか、全力で臨めるかを考えるきっかけにしてもらいました。売り方のスキル研修やロールプレーイングなどの研修もありますが、研修内容はもっと大きな話のことが多いです」

「この業界は、エース営業マンが出世して管理職に就くことが多いのですが、マネジャーになったら現場にいた頃のような活躍ができない、というケースがよくあります。やはり『売れる』と『マネジメントする』はまったく違う能力ですから、そういう人にはマネジャーとして必要な能力をどう伸ばしていくか、を考えるための研修を受けてもらっています」

「研修は2カ月に1回は受けてもらい、受講者にはフィードバックを出す、研修を受けてどうするか、のアクションを決めてもらいます。研修は『いい話を聞いた』で終わってはダメで、行動につながらないと意味がないので『実践』を会社では口を酸っぱくして言っています」

“社員満足度”を高めたシフト勤務

西口氏は「会社は自律した組織であるべき」と語る。勤務日をシフト制にしているのは、新日本エネックスの勤務体系の大きな特徴だろう。

「BtoCの業態なので、平日夜や土日は休みを取りにくいところがあります。そうなると社員は家族と一緒にいる時間が取れません。そのなかでも少しでも家族と過ごせる状況を作ってほしいと、シフト制にしています。ただし、もっともお客さまに会いやすい土日を外して、平日だけで営業成績を上げるならば、頭を使う必要があります。『頭を使って数字を出しさえすれば、休んでもいいよ』という形です」