家事代行サービスのパイオニア「ベアーズ」取締役副社長で、大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などの家事監修を手掛けたことで知られる家事研究家・高橋ゆきさんは「コロナ禍で共働き夫婦が悲鳴を上げています」と警鐘を鳴らす。いま日本の夫婦に何が起こっているのか。“現場”から見えてきた意外な実情とは——。

悲鳴を上げる「共働き夫婦」

緊急事態宣言で保育施設や学校が臨時休園や保育提供の縮小・休校となった2020年3月上旬、私たち「ベアーズ」は、東京23区内に在住する100組のご夫婦に無償の家事代行サービスの提供を決めました。

自社のホームページ上で希望者を募ったところ、わずか4時間半で枠が埋まってしまいました。その後も家事代行の問い合わせは日に日に増え、同年10月には問い合わせ件数が前年比120%増に……。

コロナのテレワークに伴う家事、育児の負担が大幅に増え、日本中の家庭で悲鳴が上がっていることを実感する出来事でした。

男女ともに生涯働き続けることが社会の標準的な姿に変わったいまも、家事・育児の実態は、かつて専業主婦が一身に背負った時代のまま。その矛盾がコロナ禍で一気に噴き出たのだと、私は考えています。

対立する人
写真=iStock.com/LaylaBird
※写真はイメージです

夫婦の関係悪化度が2倍に…

リクルートワークス研究所の調査で、夫婦ともテレワークをしている場合、夫の1日の家事・育児時間は3.1時間。対して妻は6.3時間と、妻が夫の約2倍であることが明らかになりました。

働く母親たちは1日24時間のうち、通常の勤務時間である8時間に加え、家事・育児が6時間。最低でも1日に合計14時間という超長時間労働をしている実態がわかったのです。

この事実が、夫婦関係に大きく影響を及ぼしています。

内閣府が2021年6月に公開したコロナ禍における生活の変化の調査(第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査)によると、家事育児において「夫の役割が増加した」群では「夫婦の関係がやや悪くなった」「夫婦の関係が悪くなった」という回答が合わせて10.4%だったのに対し、「妻の役割が増加した」群では18.9%でした。

夫の家事・育児のかかわりの少なさが、直接的に夫婦関係に亀裂を深めていく様子が見て取れます。