「アフガニスタン戦争」は米国の敗北に終わった

8月30日、米軍はアフガニスタンからの撤退を完了した。これによって、20年間続いた米国史上最長のアフガニスタン戦争はひとまず終結した。バイデン政権は、今後、外交主導でイスラム勢力との新しい関係を目指すとしている。ただ、その実態は米国の敗北といえるものだろう。

バイデン大統領
写真=CNP/時事通信フォト
ジョー・バイデン米国大統領=2021年9月2日、ホワイトハウス

アフガニスタンからの撤退の背景には、最長の戦争に米国自身がもう耐えられなくなったことがある。バイデン政権としてはアフガニスタンから手を引き、台頭著しい中国への対策に勢力を集中する意図があるとみられる。

今回の米国の撤退は、これから世界情勢に重要な影響を与えるはずだ。中東地域における米国の影響力は低下し、テロのリスクは高まるだろう。見逃せないのは、バイデン政権の撤退作戦には大きな誤算があったことだ。米国軍撤退後、タリバンがこれほど早く首都カブールを制圧すると予測できていなかった。そのため、国外に脱出できずアフガニスタン国内に取り残された人は多く、米国内外でバイデン政権への批判が増えている。アフガニスタン撤退は、バイデン政権の求心力低下につながる可能性がある。

撤退した最大の理由は「対中政策への集中」

アフガニスタンから撤退した最大の理由は、バイデン政権が政治、経済、安全保障面での対中政策に集中して取り組むためだ。人工知能(AI)などIT先端分野を中心に、中国の脅威は増している。

台湾海峡やインド太平洋地域における中国の影響力拡大は世界情勢を不安定化させる要因だ。人権問題や脱炭素に関する取り組みでも、対中政策の重要性は増している。米国が中国の脅威に対抗し、基軸国家としての地位を守るためには、中東地域に分散してきた力を一つにまとめ、対中政策に専心しなければならない。

それに加えて、米国の世論は過去最長のアフガニスタン戦争のコストに耐えられなくなっている。そのため、多くの世論調査において、アフガニスタンからの撤退を支持する割合が50%を上回っている。