野党は力不足で、日本のかじ取りなど任せられない
読売社説は野党の勝因と自民党の敗因に関して次のように分析する。
「元横浜市立大学教授の山中氏は『コロナの専門家』とアピールし、カジノを含む統合型リゾートの横浜誘致には反対を掲げた。野党支持層に加え、無党派層の支持を広く集めたのが勝因だ」
「政府・自民党は、カジノを成長戦略の柱に位置づけてきた。それにもかかわらず、カジノ反対を訴えた小此木氏を首相が支援したことは、有権者の理解を得られなかったのではないか。推進する(現職の)林(文子)氏との間で保守分裂ともなった」
菅首相が思惑から小此木氏を応援したことで、分かりにくい選挙になったことは間違いない。
読売社説は「選挙戦の序盤では、3氏の接戦となるという見方が強かった。だが、コロナの感染状況が悪化したことで、菅政権が有効な対策を講じられていない状況に焦点が当たり、山中氏が政権批判票を集めて大差の勝利につながった」との分析を加えるが、選挙はときの風に乗った候補者が勝利する。新型コロナ対策で批判を受ける菅首相の支援は逆風となり、あだとなった。
後半で読売社説は「首相にとっては、4月の衆参3選挙や東京都議選に続く大型選挙での敗北となり、求心力の低下は避けられない。衆院の解散戦略に影響を与えるのは必至だ」と指摘し、こう訴える。
「党内では、首相のもとでは選挙を戦えないといった声が出ている。首相の人気に頼るだけでなく、党として、選挙基盤を固め直すことも必要となろう」
秋の衆院総選挙で自民党が大敗し、野党政権が誕生して国政自体が混乱することが心配だ。いまの野党はまだまだ力不足で、日本のかじ取りを任せられないと思うからである。
総裁選出馬をあきらめ、後進にその道を譲るべきだ
産経社説は「菅義偉首相は、自身の新型コロナウイルス対策に有権者からNOを突きつけられたことを大いに反省し、対応を抜本的に改めなくてはならない。それなしにコロナを早期に押さえ込むことはできず、信頼の回復もおぼつかない」と書き出し、「地方選挙とはいえ菅首相が招いた敗北である」と指摘する。
書き出しもその後の指摘も手厳しい。強固な保守で知られ、菅政権を擁護してもおかしくはない産経社説がここまで批判するのだから、菅首相は総裁選出馬をあきらめ、後進にその道を譲るべきである。
産経社説は小此木氏の敗北を「市長選では、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の是非も問われ、反対派の山中氏が当選した。誘致は菅首相肝いりの政策だが、首相が誘致を目指す林氏ではなく、反対の小此木氏を支援したのも分かりにくさに拍車をかけたといえる」とも指摘する。
朝日社説も批判していたが、菅首相の小此木氏支援は「ご都合主義の極み」なのだ。「恩人の息子だから」「野党系市長誕生の阻止」「市長選勝利を求心力につなげたい」など菅首相はいくつもの思惑をめぐらせ、そうした思惑に固執した。
その結果、選挙の構図が分かりにくくなり、恩人の子息は落選し、自民党は敗れた。菅首相はその責任をどう感じているのだろうか。