五輪終了後、また「コロナ怖い」に戻ったメディア

このように、記事内では10項目ほど五輪開催後の未来予想を挙げていたわけだが、実に9項目を的中させてしまった。さらに、これらの予測が当たったと仮定した場合の結論として、くだんの記事では以下のように綴っている。

〈高確率で期待できる日本人選手の金メダルラッシュは、「とにかく悪い材料を探す」ことに躍起になってきた「コロナ、ヤバ過ぎ」派の日常をぶち壊してくれる可能性がある。それでも世間の風が変わらなかったら、いよいよ日本人の集団ヒステリーも末期症状。閉塞感に包まれた暮らしが、これから何年も続くことになるだろう。そうなれば「一生マスク生活」なんて暗黒社会も、決して絵空事ではなくなってくる〉

実際、五輪が終わった途端、さまざまなテレビ番組は予想どおり「コロナ、やはりヤバ過ぎ」「デルタ株の恐怖」「医療崩壊の危機」「若者でも重症化する」などと煽りを再開してきた。私が上記の結論で述べた絶望的な未来図は、また当たってしまうかもしれない。

いつまでも世論が変わらない

ただ、希望もなくはない。「日本一コロナ患者を診た町医者」として知られる兵庫県尼崎市の長尾和宏医師が、8月10日に「バイキング」(フジテレビ系)と「フジプライムニュース」(BSフジ)に出演。現在、感染症法で「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、医療機関などでは同法の2類に相当する扱いになっている新型コロナウイルスを、5類へ変更するべきだと訴えたのだ。

この1年7カ月、恐怖をひたすら煽るだけだった東京の番組が長尾氏のような人物を出演させたのは、潮目が変わる予兆としてポジティブに捉えたい気持ちもある。とはいえ、コロナに怯えきった暮らしにすっかり染まってしまった大多数の日本人のなかには「このまま一生、緊急事態宣言を出しておいてもらいたい」とすら考えている人が少なくないように映る。もはや正気の沙汰ではない。彼らがこのまま変わらないとしたら、日本の未来は絶望的だ。というか、個人的にはすでに醒めきってしまった感覚があり、日本社会や日本人への期待を一切抱かなくなりつつある。正直、すべてがどうでもよくなってしまった。

さて、私は今年5月の段階で現在の状況をほぼ的中させてしまったわけだが、コロナに関してはこの1年7カ月、メディアと専門家の論調がとにかく変わらなかったため、人々の気持ちもずっと変わらないまま時間だけが過ぎてしまった。つまり、世論が変化せずに停滞しているのである。それどころか、7月の都議選で「五輪無観客」を公約にした都民ファーストの会が当初の予測よりも健闘したことから、「コロナはヤバ過ぎる」路線は引き続き大衆ウケすることが明白になった。いいのか、それで。