コロナ禍はこれからどう進んでいくのか。ジャーナリストの池上彰さんは「歴史書が参考になるはずだ。歴史を学ぶというのは過去についてあったことを知るだけでなく、未来について考える力を身につけることになる」という――。

※本稿は、池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題12』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

学生が立てこもる東大安田講堂に向け、放水する機動隊の車両
写真=時事通信フォト
学生が立てこもる東大安田講堂に向け、放水する機動隊の車両=1969年1月、東京都文京区

学生運動で授業が無くなったからこそ今の自分がある

新型コロナウイルス感染症の影響で、企業が新卒採用を手控えています。第2の就職氷河期到来かなどと報道され、不安になっている若者も多いでしょう。でも、いまできることをやるしかありません。

「学生のときにしておいたほうがいいことは何ですか?」とよく聞かれます。これに対し「たくさん本を読むことです」と答えます。

私も学生時代かなり本を読みましたが、いま考えるともっともっと読んでおけばよかったと後悔しています。

私が大学へ進学した1969年という年は学生運動が激しくなり、東京大学と東京教育大学(現在の筑波大学)の入試が中止になってしまう(東京教育大学は体育学部を除く)という、受験生にとっては大事件があった年です。学生たちの抵抗運動を抑えつけようとして、当時の政府は「大学管理法案」を通そうとしました。大学をもっと厳しく管理できるような法律です。それに対して多くの大学生たちが反発し、次々に全国の大学がストライキに入っていきました。

いろいろなことを学びたいと大学に入ったのに、ストライキが続いてキャンパスに入れず授業もない。自分で本を読んで勉強するしかありません。辛かったけれど、自分で課題を見つけて自分で学んでいくという力がついたと思います。その後もずっと勉強を続けていますが、あの頃の体験があるからこそ社会人になってからも独学でいろいろなことを学び、結果的にいまの自分があると思うのです。

独りの時間を持つことで成長できる

1960年代、京都大学に奥田東という名物総長がいました。入学式の祝辞で新入生を前に「京都大は諸君に何も教えません」と挨拶したといいます。新入生たちは度胆を抜かれたでしょう。これはどういうことかというと、大学の役割というのは手取り足取り君たちに教える場ではない。大学生は学生であり、生徒ではない。受け身ではなく自ら学んでください。それを大学はお手伝いしますというわけです。

コロナ禍でステイホームを強いられ、物理的には人と人とが切り離されてしまいました。でも現代はSNSでつながっている。人類の長い歴史の中でこんなに多くの人が常に誰かとつながり続けているというのは実は極めて異常なことです。人間は社会的な存在です。人と人とのつながりによって生きがいを感じます。それは当たり前ですが、四六時中誰かとつながり続けているのはむしろ異常な状態だと思った方がいいと思います。

時に孤独な時間も必要です。独りになって思索を深める時間を持つ。少しは1人で沈思黙考する。それが人間的にも学問的にも成長させてくれるのではないでしょうか。次の飛躍のために“孤独を糧”にしてほしいと思うのです。