歴史の中にこそ現代を生きるヒントがある

私は東京工業大学での講義とは別に在学生、卒業生たちと月に1度、読書会をしています。この中で半藤さんの『世界史のなかの昭和史』を取り上げたことがあります。なぜこの本を取り上げたのか。これまで高校では日本史と世界史は全く別々に教えてきました。これではいけないということになって、2022年度から世界史・日本史の枠にとらわれず近現代を学ぶ「歴史総合」という新科目が導入されます。そこで、世界史と日本史・昭和史をバラバラに学ぶのではなく、歴史を横断的に見てほしいと思ったからです。

このことを知った出版社の提案で、半藤さんを交えての読書会が実現しました。半藤さんがよくおっしゃっていたのは、「歴史は人間がやっていることなのだからまた同じことをやるに違いない。歴史を学ぶということは、人間がいざというときにどんな判断をするか、どういうところで誤るか。それを知ること」だというのです。

私たちはこれからどう生きていけばいいのか、どう行動すべきか問いかけられています。歴史の教訓を未来に生かさなければなりません。歴史の中にこそ、現代を生きるヒントがあるのです。

「コロナ禍をきっかけにIT化」するためには何が必要か

東京工業大学では、「未来年表」を発表しています。「人々が望む未来社会とは何か?」

池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題12』(KADOKAWA)
池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題12』(KADOKAWA)

大岡山キャンパスの百年記念館1階に、自分たちが描いた「ありたい未来の社会像」が年代順に並んでいます。2040年のところに「ほとんどの仕事はオンライン化され、旅をしながら働くことができるようになる」「おうち完結生活」というシナリオが書かれています。2020年に、2040年の社会が一足先にやってきたのです。

「いずれリモート勤務が実現します」と言われてきましたが、多くの人が、それは5年、10年先かな、などと思っていたのではないでしょうか。ところが緊急事態宣言が出て、在宅勤務が強いられた結果、満員電車に揺られる必要もない、仕事が自宅でできるという近未来が出現したのです。

今回のコロナの感染拡大で社会のIT化が大きく進んでいくでしょう。それによって私たちはまた新たな文化を築いていくことができます。

いま求められているのは「感染症」と「分断」という2つの危機をどう乗り越えるのかということです。

さて、2050年の未来の教科書に、現在はどう書かれるのでしょうか。

「それまでデジタル化が遅れていた日本は、2020年のコロナ禍をきっかけに急激にデジタル化が進み、世界トップレベルのIT化社会が実現し、その後の日本経済の発展に大きく寄与した」

そう書かれるようになるためには何をすればいいのか。それを私たち自身が考えなければならないのだと思います。

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