国際競争力トップレベルのデンマークでは、仕事がうまく進まない場合どう対応しているのか。デンマーク文化研究家の針貝有佳さんは「うまくいっていないプロジェクトの裏には人間関係の問題があることが多い。人間関係の修復には膨大なエネルギーが必要なうえ、頑張っても関係が修復できるとは限らない。だから相性の悪い2人の仕事を分離して、共同作業をしなくても済むように対処する方がいい」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、針貝有佳『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

互いに背を向けて腕組みをして立っている2人のビジネスパーソン
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「仕事だからお互いを好きになる必要はない」

ところで、デンマーク人はいつでもどこでも建設的な議論をしてうまくいくのだろうか、という疑問が湧いてくるかもしれない。もちろん、デンマーク人でも、うまくいかないことはある。

デンマーク人もやはり人間である。人それぞれに好き嫌いもあれば、相性もある。

そこで、相性が合わない人との仕事の仕方や、どうしても人間関係がうまくいかない場合の対処法について聞いてみた。これがなかなか興味深い。

労働組合運営管理局(Fagenes Bofallesskab)のトップを務めるケネットは、職場で起こり得る問題のなかで一番厄介な問題は、メンバー同士の相性が合わないケースであると言う。

ケネットは、その場合は「ここは仕事をする場だから、お互いを好きになる必要はない」と伝え、割り切って仕事してもらうようにする。

だが、時には、間に入ってめ事を止めなければならないこともある。

ポイント 職場では、お互いを好きになる必要はない

相性が悪い2人の仕事は「分離」する

建築家として第一線で20年以上働いてきたエヴァは、うまくいっていないプロジェクトを立て直す役を引き受けることも多い。

そして、悲惨な状況におちいっているプロジェクトの裏には、必ずと言っていいほど「人間関係の問題」がある、と指摘する。

「仕事で成果を出したかったら、何か問題があったときに、ちゃんと話さなくちゃいけない。でも、いい人間関係がないと、話すことすらできない。だから、仕事の成果は、人間関係で決まると言ってもいい」

人間関係がうまくいっていない場合、すぐ近くの席で仕事をしていても、会話を交わすことなく、メールだけでコミュニケーションをとっていることが多々ある。エヴァによれば、こういった関係からは、どうやっても良い仕事の成果は生まれない。

逆に、良い関係があれば、一日中一緒にいても苦にならないし、何かあったときに質問も相談もしやすい。そして、それは仕事の成果としてはっきりと表れる。

人間関係の修復には、膨大なエネルギーが必要だ。しかも、頑張ったところで、関係が修復できるとは限らない。

その場合、エヴァは、関係修復の努力をするよりも、相性の悪い2人の仕事を分離して、2人が共同作業をしなくても済むように対処する。

ポイント 相性が悪い2人は、共同作業をしなくて良いように「分離」する