日々積み重なる「入院困難者」
やっと東京オリンピックが終わった。
「コロナに打ち勝った証し」と言われたオリンピック。「スポーツの力」で「子どもたちに夢と希望」をもたらしてくれるはずだったオリンピック。しかしその裏の“現実世界”では、この2週間余りのうちに新型コロナの感染拡大は過去最悪の状況となり、今や「悪夢と絶望」が充満している。オリンピックは、感染拡大には遺憾なくその力を発揮したが、感染抑止には当然ながら全く無力であったのだ。
当初の専門家による感染拡大予測をはるかに超えるスピードでの感染者急増に、もともと脆弱であった日本の医療現場はあっという間にその限界を迎えつつある。東京都では新規感染者が連日4000人を超え、「自宅療養者」と称される「入院困難者」の数も日々積み重なっている。
過去最多という日本選手の金メダルラッシュに、過去最低の支持率にあえぐ菅義偉首相は、そのご利益を得ようとするかのごとく祝賀ツイートを連発する一方で、この過去最悪の感染拡大については、あまりの事態に直視したくないのかほとんど発信せず、多くの国民の顰蹙を買った。
そればかりではない。菅政権は8月3日「急激な感染拡大においても医療提供体制を確保し、誰もが症状に応じて必要な医療を行うことができるよう方針転換した」として、感染急増地域において、入院は重症者・重症化リスクの高い者に限定し原則自宅療養とするとの方針を示したのだ。入院へのハードルは一気に上がり、重症一歩手前の中等症に該当する感染者さえも「自宅療養」とされかねなくなることから、世論はもちろん与党内からも猛烈な批判の声が上がった。
結局、2日後の8月5日に政府はこれらの批判を受ける形で再度方針転換を余儀なくされ、「中等症以上の人は原則入院」という従来の方針に立ち戻ることになった。しかしながら入院させる必要がある人以外は原則自宅療養との方針は撤回せず、無症状者や軽症者を宿泊療養施設に収容するという従来の原則が大きく変えられることとなったのである。