新人記者が「私人逮捕」されるという異例の事件

6月22日、国立大学法人旭川医科大学で学長解任問題を取材していた北海道新聞社旭川支社報道部の記者が建造物侵入の疑いで大学職員に私人逮捕(検察官、検察事務官、司法警察職員以外の一般人による現行犯逮捕)された事件は、北海道新聞社が2週間以上も経った7月7日に「社内調査報告」を公表した。

北海道新聞本社
写真=Sengoku40/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons
北海道新聞本社(写真=Sengoku40/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons

だが、この調査報告は「内容も、手法も、あまりにお粗末」と激しい批判を浴びることとなった。

報道機関に対する信頼が薄まりつつある中、メディアの劣化が浮き彫りになった事件としてメディア史に残ることになりそうだ。

まず、旭川医大の説明や北海道新聞社の「調査報告」から、事件を再現してみる。

旭川医大は6月22日午後3時から、看護学科棟4階の会議室で、不祥事を起こした吉田晃敏学長の解任を検討する学長選考会議を開いた。

午後3時50分頃、大学当局は、報道各社にファクスで、会議終了後の午後6時に記者団の取材に応じることとし、それまでは学外者の立ち入りを原則禁止する旨を伝えた。

午後4時頃、北海道新聞取材班(4人)のキャップが、入社したばかりの22歳の女性記者に、会議の出席者を取材するため校舎2階に入って待機するよう通知した。

午後4時25分頃、さらに、取材班の記者(不詳)が、女性記者に会議が行われている4階に向かうよう指示した。

直後は沈黙を続けた北海道新聞

午後4時30分頃、会議室の廊下で、選考会議の様子をドア越しに聞き耳を立てスマートフォンで録音していた女性記者を、大学職員が発見。学外者が無許可で学内に侵入していると判断して私人逮捕し、旭川東署に引き渡した。

旭川東署は、建造物侵入の疑いで女性記者の身柄を拘束して取り調べ、丸2日後の24日に釈放した。

旭川医大は28日、記者会見を開き、事件の詳細について説明、逮捕は正当な行為と主張した。