こんがり焼けたトーストに、溶けたバターの香りが広がる幸せな朝の食卓――。焼きたてのアツアツのパンは、それだけでご馳走だ。
しかし最近は「あったかいパン」だけでなく、「冷たいパン」も食卓に幸福を運んでいるらしいのだ。
「夏は一般的にパンの売り上げが落ちます。この暑さにトーストをするのさえ嫌だという人も少なくありません。そこで開発したのが、冷蔵庫で冷やして食べるパンです」と話すのは、全国にベーカリーを展開するアンデルセン総合企画室マーケティング部の大村美保さん。同社では昨年、上白糖の代わりにオリゴ糖を使い、冷やしてもしっとりとした食感を保つ「クールサマーブレッド」を販売したところ、大ヒット。同じ形状の小型食パンに比べて3~4倍、3カ月で約1億円もの売り上げを記録した。今年はアルフォンソマンゴー風味など味の種類を増やし、生クリーム入りクリームパンなど、ほかにも冷やしておいしいパンの販売を開始。いずれも好調な売れ行きだ。
またベーグル店のチェーン「BAGEL&BAGEL」では、さらにクール度の高い、凍らせて食べる「アイスベーグル」を販売している。生地の内部にクリームが入っており、凍ったまま食べてもいいし、表面を1分ほどトースターで焼き、「あったか冷たい」温度差を楽しんでもいい。「実は今年で7年目です。季節商品なので、最近は夏の風物詩として楽しみにしてくださる方も多い。通常のベーグルは20~30代の女性に人気ですが、アイスベーグルは、帰省土産にされたり、お子様から年配の方まで幅広く支持されているのが特徴です」(広報の菅沼伸友さん)。
こんなに暑い日本の夏。今後も、パンのみならず、「あったかい」が常識のものに「冷たい」がどんどん進出してきそうな予感である。