アラブ諸国においてサッカーは実質的な国技になっている。“中東で一番有名な日本人”と呼ばれている鷹鳥屋明さんは「サッカーはアラブで大人気のスポーツだが、政治情勢によっては“代理戦争”のようになる。だからサウジアラビアで最も有名な日本人も、その“戦争”に巻き込まれた一人なのだ」という――。

※本稿は、鷹鳥屋明『私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

2020年11月28日、サウジアラビア・リヤドのキング・ファハド国際スタジアムで行われたサッカーのキングス・カップ決勝戦、アル・ヒラルとアル・ナスルの試合に勝利したアル・ヒラルのキャプテン、サルマン・アル・ファラジがカップを掲げている
写真=EPA/時事通信フォト
2020年11月28日、サウジアラビア・リヤドのキング・ファハド国際スタジアムで行われたサッカーのキングス・カップ決勝戦、アル・ヒラルとアル・ナスルの試合に勝利したアル・ヒラルのキャプテン、サルマン・アル・ファラジがカップを掲げている

アラブでは実質的に“国技”になっているサッカー

アラブにおいてサッカーというのは実質的に国技のようなポジションになっています。

日本では“ドーハの悲劇”などが有名ですが、サッカーワールドカップなどで日本と中東諸国との試合を一度は見たことがあるのではないでしょうか。また、2022年にはカタールで中東初のワールドカップが開催される予定です。

そんなサッカーが大人気のアラブのなかで、私が関わってきたサウジアラビアの有名チームについて語っていきます。サウジアラビアのサッカーを語るうえで欠かせないのが、首都であるリヤドに本拠地をかまえる2つの有名チームです。

ひとつは「アル・ヒラル」という、アラビア語で「三日月」という意味で、ロゴも三日月の青色がイメージカラーのチームと、もうひとつが「アル・ナスル」という、アラビア語で「勝利」を意味する黄色がイメージカラーのチームです。

私はアル・ヒラルのファンで、「AFCチャンピオンズリーグ」というクラブチームによる大会で浦和レッズとの対戦の際にもアル・ヒラル側で応援していました。

このアル・ヒラルというチームは非常に歴史が古く、1957年に創設されています。サウジアラビアの国内リーグである「サウジ・プロフェッショナルリーグ」では最多優勝記録である16度の優勝を経験しており、さきほどの「AFCチャンピオンズリーグ」では3度も優勝に輝いているほどの強豪チームです。