※本稿は、鷹鳥屋明『私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
意外と知られていないアラブの有名財閥
さてここでは、中東の財閥についてお話をしていきます。
多くの人はアラブの“王族”のイメージはあっても(そして、それは第1回で述べたようにステレオタイプで正しくないものもあるわけですが)、中東の“財閥”のイメージはあまりないかもしれません。
ここからはあまり日本では馴染みのない中東の、特に湾岸アラブ諸国にある財閥についてお話できればと思います。まず、財閥の定義として、特定の一族の独占的な出資によって行われた経営形態を指します。
日本の有名財閥、「三菱・三井・住友」などがイメージされると思います。中東でこれと同じような規模の有名財閥というようなものがあるかと言われると、「ある」と答えると同時に、一族経営が多いからある意味財閥という形態の会社が多いとも言えます。
例えば、さきほど紹介したアブドゥル・ラティフ・ジャミールも、ジャミール家により経営がされており、日本のトヨタ自動車とサウジアラビアでの販売における独占契約をしているわけですから、これは相当強い力を持っている有力財閥と言えます。
ほかにも、有名財閥として歴史のあるグループでクウェートのアルシャヤグループがあります。アルシャヤグループは1890年の設立から現在ではクウェートだけでなく、中東の多くの国でスターバックスやH&M、ヴィクトリアズ・シークレットなど数多くのグローバルリテールの流通を手掛けている巨大企業です。
このように有名ブランドの総代理店を独占している企業は、当然現地マーケットにおいて存在感は圧倒的です。そういう財閥がすでに扱っているブランドで実績を作り、さらに別のブランドの代理店も兼ねるようになり、どんどん勢力が増していく構図ができます。