ようやく「国産ワクチン」の開発に踏み切るが…

一向に収束する気配が見えない新型コロナウイルス。ようやく日本が「国産ワクチン」の開発に踏み切る。6月2日の「COVAX(コバックス)ワクチンサミット」で菅義偉首相は、国産ワクチンの研究開発拠点の整備構想を表明、官民あげてのワクチン開発が動き出す。

新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける菅義偉首相
写真=時事通信フォト
新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける菅義偉首相=2021年3月16日、東京都新宿区の国立国際医療研究センター

コバックス・サミットは日本政府と国際機関の共催だ。ワクチンの接種が遅れる日本は米国から「渡航中止勧告」を出されるなど、世界から孤立しつつある。このため、米国や欧州の主要国など30の国・地域の参加を要請。各国を巻き込んで「ワクチン後進国」の汚名返上をアピールしたい考えだ。

日本は米国のファイザーやモデルナなど3社のワクチンが薬事承認され、供給体制が整いつつある。東京や大阪など大都市を中心に65歳以上の接種が始まった。しかし、海外産のワクチンに頼る状況には変わりない。変異株がまたぞろ出てくれば、それに対応したワクチンの開発が必要になり、日本への供給は後回しになる。「コロナ優等生」と言われた台湾でも変異株が蔓延。ワクチンの接種が遅れる蔡英文総統は一転して苦しい立場に置かれている。

日本は1980年代までは「ワクチン先進国」だった

日本と同様、台湾や韓国は国産ワクチンの開発に後れを取った。ワクチン接種の遅れが「経済回復の遅れ」を招く中で、日韓台の焦りの色は日に日に濃くなるばかりだ。

起死回生を目指す日本はコバックスサミットで、資金や体制面での支援のほか、実用化までの国の制度の再構築を掲げる。世界トップレベルの研究開発拠点を設けて、治験や新薬の承認などの面で規制を緩和し、大学や製薬会社が共同研究に取り組む体制を構築する。製薬会社の資金面での懸念を払しょくするために開発したワクチンを政府が買い上げる仕組みや基金設立に向けても検討する。

今や、他国のワクチンに頼る日本だが、1980年代までは「ワクチン先進国」だった。水痘、日本脳炎、百日ぜきなどのワクチンを世界に先駆けて開発、米国などに技術供与していたほどだ。

では、なぜ、ワクチンの開発が途絶するまで衰退したのか。その大きな要因の一つが訴訟だ。