いま性風俗で働く多くの女性が生活苦に陥っている。彼女たちは自業自得なのか。風俗で働く人のための無料生活・法律相談サービス「風テラス」を運営する坂爪真吾氏は「自己責任を問う前に、生きていく上で大切な知識を教えず、必要な人に公助が行き届かない社会のあり方を見つめ直す必要がある」という――。
「いま手元に50円しかない」
——緊急事態宣言下で、性風俗の世界にはどんな変化があったのでしょう。
コロナ禍以前から、性風俗の世界では、昼の仕事を見つけられなかったり、お金が必要な事情がある人たちが、短期間に高収入を得て、生活を建て直そうと働いていました。女性たちは、単なる貧困以外にも、DVや虐待、介護や育児、ワーキングプア、若者の貧困、知的障害や精神疾患など、さまざまな問題を抱えています。性風俗の世界は、基本的に現金日払いの仕事です。表社会の福祉や支援制度から取り残され、金銭的に困窮した人たちにとって、共助の場と言える役割を果たしていました。
しかし、昨年4月7日に1回目の緊急事態宣言が発令され、状況が一変しました。月30万円、50万円を稼いでいた女性たちの収入が突然ストップしてしまった。
風テラスには、切羽詰まった女性たちから、次々と相談がよせられました。
「暴力を振るう親から逃げてホテル暮らしをしていたのですが、コロナの影響で収入がなくなり、所持金は数千円しかありません。保険証も住民票も何もないので、コロナ給付金も受けられそうにありません」
「これまでは毎月80万近く稼ぐことができていたので、500万円ほどの借金を問題なく返済できていたのですが、コロナの影響で収入がなくなり、返済ができなくなりました。カードが止められたら生活ができません」……。
なかには「いま手元に50円しかない」「食べるものも、住む場所もない」という切実な状況に置かれた人たちもいました。
私たちが、性風俗で働くリスクをひとつでも減らすために「風テラス」を立ち上げてから5年。これほどの数の相談がよせられたのは、初めてでした。