「三亜国際免税城という大きなショッピングセンターに行ったのですが、連休でもないのにかなりの観光客がいました。COACH(コーチ)とかグッチなどのブランドショップには列ができていて、入場制限しているショップもありましたね。帰りの空港は免税品店の買い物袋を何個も提げている人でいっぱい。ほとんどの人がブランド品の買い物目的でここを訪れている、と感じました」

コロナ禍でも「バブルのような熱狂ぶり」

海南島は中国の最南端に位置し「中国のハワイ」と呼ばれている熱帯性気候の島だ。だが、ここ最近、コロナで海外旅行に行けない中国人たちが大挙して押し寄せており、「まるでバブルのような熱狂ぶり」(前出の男性)となっている。

グッチ
写真=iStock.com/tupungato
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そのきっかけとなったのは2020年7月、免税品の購入制限が1人当たり年3万元(約50万円)から10万元(約170万円)にまで引き上げられ、商品の種類も38から45種類へと増加されたことだった。

それに先駆けて、免税品のEC(ネット販売)も始まり、海南島へ行った旅行客なら、離島後でも一定期間は専用のサイトで免税品を購入できるようになったこと、同12月に免税品を販売する大型ショッピングセンターが新規に建設されたこと、リゾートホテルが次々と開発されてリゾート地としてのインフラが整備されたことなども拍車をかけ、コロナ後の国内旅行先として、一躍脚光を浴びた。

中国政府の統計によると、コロナ禍だった2020年には本土から約6500万人もの観光客が訪れ、その数はコロナ前の2019年の8割近くにまで達したという。2020年に免税品の売り上げ額も約274億元(約4300億円)に上り、前年比で約2倍になった。

田舎の島に目をつけた中国政府の思惑

中国人の「爆買い」は一段落したのかと思いきや、むしろ逆で、コロナ禍でうっぷんがたまり、海外旅行に行けないことによるストレスから、彼らの「買い物熱」はここにきて最高潮に盛り上がっているかのようだ。前出の男性の知人はこのGWに家族3人で海南島を訪れ、買い物やホテル代、食事代などで合わせて7~8万元(約120万~136万円)ほど使ったと話していたそうだ。

今後「買い物天国・海南島」のイメージは増大していくものと思われるが、しかし、海南島は単に免税品が安くなる島というだけではない、中国政府の思惑や長期計画も関係している。

中国政府にとって海南島はどのような存在なのか。古くは1988年、ここを経済特区としたことがあったのだが、当時の開発はうまくいかず、すぐに頓挫した。2001年からは「ボアオ・アジア・フォーラム」などの国際的な会議が開かれるようになり、海外でも知名度が上がった。