※本稿は、石川幹人『科学が解明した 悩んでもしょうがないことリスト』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
大人がイライラするのはなぜ
幼児はイライラするでしょうか? お気に入りのおもちゃが壊れてしまったら、物を投げたり暴れたりしますね。思い通りにならない現実に直面して「だだをこねる」のですが、
しばらくすると結構、けろっと元通りになります。
動物も概してこんな感じです。思い通りにならないと、力任せになんとかしようとします。ひと通りやってみて「どうにもならない」と悟ると、あきらめて去っていきます。
大人がイライラしがちなのは、幼児のように物を投げたり暴れたりできないからなんです。人間は「動物のように物事を暴力で解決するのはやめよう」と決めたから、子どものような「うっぷん晴らし」はできなくなりました。
しかし、ついこの間まで、紛争を解決する主要手段は暴力でした(注1)。現代社会のルールでは「暴力なしよ」なのに、私たちの心の備えは「まず暴力をためしてみる」となっているのです。これが、パワハラ横行の理由でもあります。
脳活動が暴力向きに活発化しているのに、身体を動かしてはダメという悩ましい状態なのです。
注1:いまだに世界各地では戦争が絶えないが、暴力による死者は歴史的には減少していることがデータによって示されている(スティーブン・ピンカー『暴力の人類史 上・下巻』青土社)
イライラを止めるためにすぐできる行動
イライラを止めるには、活発化した脳を沈静化すればよいのです。それには「ため息」が効果大です。息を吐ききると、肺の空気がなくなり、脳への酸素供給が低下するので、活発化した脳細胞に栄養が行きにくくなります。酸素不足の危機を感じた脳が、沈静化に向かうのです。
ただ、部下が思い通りに仕事をしてくれないときのイライラ防止に「ため息」をつくと、これみよがしで嫌な印象を与えかねませんね。そんなときは、長く小さく息を吐くと、周りに知られずにイライラ防止ができます(注2)。
さて、現代では新しいタイプのイライラが登場してきました。「紛争解決は暴力ではなく理性で行え」と言われますが、この「理性」を発揮するのにイライラが伴うのです。
理性を発揮するには、複雑な物事を論理的かつシステマティックに考えないといけません。そのときに主に使われるのが、額のすぐ裏側にある脳部分「前頭前野」です。この部分は、人類において進化した「もっとも新しい脳(注3)」であり、いわば「進化中の脳」なのです。
つまり、現代社会は理性を重視するようになったものの、人間は理性を十分には発揮できないのです。思うようにならない科学的な理由があるので、しょうがないと言えます。
注2:ヨガの瞑想や仏教の坐禅で知られている「心を落ち着かせる方法」でもある。
注3:胎児の初期に魚のような体形のときがあると聞いたことがある方もいるだろう。胎児は、生物進化の過程をたどって成長する。だから、新しい脳はもっとも後になって発達する。

