イライラの先に待っていること

それなのに、現代社会では教育によって理性を育てようとしています。若者が勉強嫌いになるのもうなずけます。なにせ、前頭前野は「もっとも新しい脳」であるがゆえに、子ども時代のそれは完成からほど遠いのです。私たちはみな、そして若者はとくに、勉強しようとすればするほど、思い通りにならない自分にイライラするのは仕方のないことです。

青の背景に赤い紙の怒った顔を持つ手
写真=iStock.com/Alex Aviles
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この際だから、イライラを楽しんじゃいましょう。イライラするのは、前頭前野に刺激が加わっているということです。理性が発達しているんですから、いいことなんです。新しい趣味や仕事を始めると、思い通りにいかずイライラしますよね。それでも、やがて慣れてうまくこなせるようになります。イライラの先には楽しいことが待っているのです。

「だったら最初からイライラが楽しければよかったのに」と思いませんか。じつは古い脳が、理性を使うのを妨害するからイライラするのです。理性はじっくり考える状態を作るので、身体が無防備になりやすく、警戒すべき状況をもたらします。そこで、過酷な自然環境で進化してきた古い脳は、考える作業は適当に切り上げようと、イライラを発動するのです。

もはや、危険な状況はほとんどなくなったので、イライラはいいことにしちゃいましょう。

【悩んでもしょうがないことリスト:イライラする】
・問題を暴力で解決せずに理性で抑えようとするときイライラが生じる。
・理性をつかさどる前頭前野はまだ進化の途中。だから理性を十分に発揮できない。
・イライラしたら、ため息をついたり、長く息を吐いたりして、脳の興奮を鎮める。

300万年前から不変の「人が嫉妬する理由」

嫉妬がよく見られるのは、弟や妹が生まれた上の子です。母親の愛情や食べ物の分け前が減ると、自分の存在をアピールし始めます。時には、甘えを見せたり「幼児返り」を起こしたりします。母親もそれに気づき、上の子の甘えに付き合ってあげたりします。

嫉妬をする目的は、自分に来るはずの資源がほかの人へ行ってしまった状態を回復することです。

家族などの血縁関係ならば、たがいに助け合って食料などを共有することも多いので、分け前に不満を抱いて嫉妬する効果は大きいです。嫉妬に気づいた人が、再配分してくれます。

動物にも嫉妬に似た行動が見られますが、基本それらは資源をめぐる戦いです。人間のように嫉妬をアピールして、再配分を促す行為はありません。

人間に嫉妬が生まれたのは、嫉妬が有効に働く生活を送っていたからです。約300万年前から数万年前まで続いた狩猟採集時代の人類は、100人程度の小集団で協力活動をしていました(注4)

集団のメンバーは一蓮托生いちれんたくしょうの仲間であり、狩猟も採集もメンバー同士が集まって協力して進めていました。大型動物がとれれば、みんなで公平に分けていたのです。

狩猟採集時代の人類は、こうして公平感や平等感を培いました。嫉妬はその裏返しなのです。嫉妬をアピールすれば「あ、公平ではなかったかな」と配分の是正が生じるのです。

つまり、嫉妬に効果があるのは、協力集団の仲間に対してなのです。

注4:アフリカの草原環境では周囲に十分な食料がなく、一カ所に多くの人々は生活できなかった。人類学者のロビン・ダンバーは最大で150人だったと見積もっている(『友達の数は何人?』インターシフト)