しかも政府がカネを払わないからコロナ病床も増えず、感染が少し拡大しただけで医療崩壊が叫ばれ、緊急事態宣言がすぐ出され、ますます経済は冷え込む。政府がプライマリーバランスを守り続ければ、何重もの意味で経済が冷え込むんです。
財政規律を守っても景気は回復しなかった
【田原】各国の徹底的なコロナ不況対策の成果は?
【藤井】グラフと図表をご覧ください。フランスは一目瞭然のV字回復をしています。載せていませんが、アメリカも同じようなグラフです。
G7各国の2020年第2四半期と第3四半期のGDP実質成長率を比べ、どのくらい回復したか──新型コロナ第1波による2020年春の経済落ち込みが夏までにどうなったかを見ると、驚くべきことがわかります。なんと日本は7カ国中、経済的な落ち込みがもっとも小さかったにもかかわらず、もっとも回復できなかったのです。
【田原】消費税を下げるでもなく、給付金も少なかったからですね。おまけに布製マスクを全世帯に配るなんて、とんちんかんな施策を、大騒ぎでやっていた。
【藤井】財務省が愚かなのは、経済をダメにして財政基盤を破壊していることに、彼ら自身が気づいていないという点です。
【田原】どういうこと?
【藤井】出すカネを絞って緊縮をすればするほど、消費税を増税すればするほど経済がダメになって最終的に税収が減るんです。すると日本政府の財政赤字が増えていく。
彼らがプライマリーバランスの赤字を減らそうとすればするほど、逆にプライマリーバランスの赤字が増え、累積債務が膨らんでしまう。財務省はそんな、まことに愚かなことをやっているんです。最悪ですよ。
財務省というこの国の宿痾
【田原】諸悪の根源は財務省? 財務省のプライマリーバランスへの執着?
【藤井】そうです。日本がG7でもっとも回復できなかったのは、プライマリーバランスが安倍内閣のくびきとなって、さまざまな政策を強力に制約した結果です。結局、財務省問題が、じつは日本という国の宿痾となってしまっています。
長期政権を築きたい安倍さんは、国内で財務省、国外でアメリカという二大スーパーパワーに、最終的には「逆らう」ことができなかった。そのことで、安倍政権下の日本はがんじがらめになっていた、というのが僕の世界認識です。