月間目標しかない組織の「ラットレース」のような日常

目標を設定する場合は、月間目標だけでは危険です。さまざまな期間の目標を設定しましょう。月間目標だけだと、人は考えなくなるからです。

毎月毎月、目標に追われるような生活は、まるで、滑車の中をクルクルと走るネズミのようなもの――もし、あなたがこうした生活を経験したことがあるなら、そう思ったことはないでしょうか。この原因は、「振り返り」が不十分な点にあります。とりわけ、1カ月単位の目標しか追いかけていない職場に起こりがちな現象です。

目標と結果についての「検証」ができないままに次の目標を追いかけるサイクルだと、目標を「達成したか」「達成できなかったか」の基準でしか考えられなくなるので、ただ走り続けるだけになってしまうのです。

「次はどうしよう」と焦っていた私を変えた、支社長の言葉

白状しますと、私も入社してから2年間くらいはそんな感じで、その月の目標を達成できても、「次はどうしよう」と、常に焦りでいっぱいでした。

でも、私はラッキーでした。当時の支社長から、自分が短いスパンでしか考えていなかったことを指摘してもらえたからです。

ある日、支社長との雑談で「常に焦りを感じている」と打ち明けたところ、「別に、全勝しなくても、2勝1敗くらいで構わない。自分自身で検証をしながら、パフォーマンスをよくすることが大事だ」との答えが返ってきたのです。

月々の目標の達成こそがすべてだと思い込んでいた私にすれば、目から鱗でした。

伊庭正康『目標達成するリーダーが絶対やらないチームの動かし方』(日本実業出版社)
伊庭正康『目標達成するリーダーが絶対やらないチームの動かし方』(日本実業出版社)

考えてみると、たしかにそうです。どんな優良企業でも、またどんな優秀なスポーツ選手でも「敗戦」することはありますし、むしろ長いスパンでみてみると、「敗戦」をきっかけに飛躍しているケースが多いことに気づかされます。

なぜ、敗戦後に飛躍するかというと、敗因を分析し、次への対策をしっかりとやっているからにほかなりません。

つまり、目標を追いかけるには、検証・対策のプロセスが不可欠であることがわかります。やったことの結果、うまくいった要因、うまくいかなかった要因を自分なりに把握して、検証をする。そして、対策を講ずるのです。