他にも選択肢があるのに、2つの選択肢だけを提示して判断を迫る
■洗脳テクB「白黒思考」
「白黒思考」は、実際には他にも選択肢があるのに、2つの選択肢だけを提示して判断を迫る手法です。たとえば次のようなことを言う人がいたら、あなたはどう思われるでしょうか?
「YouTubeはもう参加者が多すぎて、これ以上の再生回数アップは望めません。このまま続けていても収益は下がっていくばかりです。新しいメディアを見つけなければ、もう先はないでしょう」
確かに現在のYouTubeは参加者の数が飽和状態にあり、ひとつのチャンネルあたりの再生数も低下傾向にあります。しかし、この人物が指摘するように、本当に「YouTubeを続けるか止めるか」の二択しかないのかといえば、そんなこともないはずです。よく調べれば現在のチャンネルに改善の余地が見つかるかもしれませんし、私のように「YouTubeは有料サイトへの入り口」と位置づけて、そもそも再生回数を気にしない手法もありえます。
この世の中に白か黒かで決着がつくような問題などほとんどなく、たいていは第三、第四の道があるもの。そんな代替案の存在を無視してこちら側の思考力を奪ってしまうのが、「白黒思考」の恐ろしさです。
その他、白黒思考にはこんな例もあります。
「私と仕事のどっちが大切なの?」
「反原発の活動に疑問があるということは、君は原発推進派だな?」
「経済学が未来を正確に予想したことはない。つまり、経済学は学問の名に値しないということだ」
いずれの発言も、ものごとを強引に2つに分けて、それ以外のグレーゾーンを認めません。本来は別の答えもあるはずなのに、2つの選択肢だけから選ぶように迫って、相手の思考力を奪おうとしているのです。
白黒思考が洗脳に効くのは、相手に即断即決を迫ることが可能だからです。
いくつか例をあげましょう。
「肉が多い食事が身体に悪いのは間違いない。ならば、ベジタリアンになるしかないだろう」
→「ほどよく肉を食べつつ野菜もたくさん食べる食事」という第三の道を無視して、肉食か菜食かの2つに限定しています。
「あんな難しい語学教材を使ったところで、モチベーションが落ちるばかりで英語力は伸びない。私がおすすめするような簡単な教材でないと意味がない」
→世の中の英語教材を「難しい」か「やさしい」かの2つにだけ分類し、「その人に適した難易度」の存在を無視しています。
このように、白黒思考は私たちの視野をせばめてしまう効果を持ちます。相手の強弁に流されないためにも、なにか重大な決断を迫られたときは「これは白黒になっていないか?」を考えるようにしてください。