ディスカウント店「ドン・キホーテ」が東南アジア進出を加速させている。前年度の海外事業の売上高は1151億円。2030年には売上高1兆円を目指すという。流通科学大学商学部の白貞壬教授は「ドンキの海外店舗は、それまでの小売の常識を覆すもので、だから成功した」という――。
コロナ禍という大きなうねりの中での積極的な海外進出
ディスカウント店「ドン・キホーテ」(以下「ドンキ」)などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが、ドンキのアジア展開を加速させている。その勢いはコロナ禍でも止まらない。2021年1月19日に台湾の台北市に同地域1号店を、3月19日にマレーシアの首都クアラルンプールに同国1号店を開いた。
現在は、香港7店舗、タイ2店舗、シンガポール8店舗、台湾1店舗、マレーシア1店舗の合計19店舗を展開(21年3月28日時点)。20年6月期に海外事業(米国含む)の実績として1151億円の売上高(全体の約6.8%)を達成しており、30年には海外事業の売上高1兆円を目標としている。
ドンキは日本国内において競合を許さない独自の小売モデルで成長し続けてきた。そのモデルは東南アジアで展開する「ドンドンドンキ(DON DON DONKI)」とは異なる。つまりドンキは国内と海外では違うモデルで、それぞれ爆発的な成長を達成しているのだ。
ドンキの最初の海外進出は06年。ダイエーのハワイ法人を買収して4店舗をドンキに転換したのが始まりだった。前身のダイエーが生鮮食料品中心の総合スーパー(GMS)という小売業態だったため、ドンキもそれまで日本国内では扱っていなかった生鮮食料品を取り扱い、現地の消費者から大きな支持を集めた。また、インバウンド客にとってもハワイ土産を安く買える店として人気が出た。