タイでは商圏内にライバル店が多く布陣
19年2月にオープンしたタイ第1号店(ドンキモールトンロー)は開店直後から入場規制がかかるほどの大盛況となった。品質の高さを誇るジャパンブランドのイメージをフル活用しながら、豊富な品ぞろえと割安感を打ち出す。東南アジアにおけるドンキのキーコンセプトは「本物志向」で、それはタイにおいても共通している。
ドンキは19年12月に、香港2号店を出店した。シンガポールやタイと同じく、香港においても信頼感のあるジャパンブランドの食料品を中心に商品構成が行われており、さらに土産品として人気の日本製菓や化粧品も取り扱っている。店内の雰囲気も日本の祭りをテーマに堤灯やうちわなどを飾ることで日本らしさを打ち出している。
2号店の商圏は新興住宅地で、高級マンションも建設されている。一方で、一般庶民も多く、地元産より割高な日本産の食料品を日常的に消費するような消費者は限定的だ。
しかし、そうした懸念をよそに、香港の2号店は同社グループにおいて「1月度の月販売上が7.6億円とナンバー2の店舗となっている」(21年6月期第2四半期決算説明会スピーチ要旨)。20年10月末時点で4店舗だった香港のドンキが21年3月末現在、7店まで増えてきているのは、日常の生鮮食料品およびグロサリーが足元商圏内の高頻度来店客にとって魅力的だからだろう。
足元商圏でうまく集客できるかが重要な課題に
ドンキの東南アジア型モデルは、食料品中心の「ジャパンブランド・スペシャリティストア」であるため、日常的に買い物される足元商圏でうまく集客できるかが重要だ。
そしてさらなる大きな課題は巨大イスラム市場への挑戦だろう。イスラム教徒が全人口の6割以上を占めているマレーシアでは、食料品中心の小売業態を展開するにあたって、商品開発・販売面でハラル認証の取得という制約がある。ハラル認証を取得した日本産の食料品が、マレーシア1号店の足元商圏内の高頻度来店客にとってどれだけ魅力的に映るかは、ドンキの巨大イスラム市場への拡大を試みる試金石になるに違いない。