新型コロナウイルスの影響でアパレル各社が苦境にあえぐ中、しまむらが快進撃を見せている。3月15日には決算の上方修正を発表。純利益は前年比の約2倍を見込んでいる。なぜしまむらは勝ち組になれたのか。流通科学大学商学部の白貞壬教授が解説する——。
洋服を選ぶ女性
写真=iStock.com/Chaay_Tee
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名門アパレルのレナウンは経営破綻へ

シーズンごとにトレンドを仕掛けて買い替えを促していたアパレル業界が、コロナ禍で行き詰まっている。

大手アパレルメーカーは、百貨店を主力販路として成長し続けてきた。だが、百貨店はネット通販の拡大により閉店が相次いでいる上、コロナ禍による長期臨時休業や外出自粛で売上げが激減した。

たとえばオンワードやワールド、三陽商会といった老舗総合アパレルメーカーは、コロナ禍の販売急減でさらなる大量の在庫を抱え、資金繰りにダメージを受けている。このため不採算の店舗や事業の整理、ブランドや人員のリストラを行っている。

2020年5月には名門アパレルのレナウンが民事再生法を申請して破綻した。レナウンにはリストラをするだけの猶予すらなかったということだ。

外出や所得の減少で衣料品の消費行動が変化した

リモートワークが定着して、人々はあまり外出をしなくなり、コロナ以前のように仕事や社交の場で所得や個性の表現手段としての服装に力を入れる必要がなくなっている。そのため高額なブランド品やトレンディな衣類への出費は急減している。インバウンド需要の減少もあって、ユニクロのような機能性を重視するグローバルブランドの売上げにも影響が大きい。スーツやジャケットなど仕事着の売上げも急減した中、仕事着から普段着および室内着へと、衣類の購入品目も変わっている。

さらに、所得の減少や雇用不安が加わることで、これまで購入していたブランドからランクを落とした衣料品の消費行動が見られる。このような状況下で、ファッショントレンドにこだわる必要もなくなることから、トレンドに敏感なアパレルブランドやこだわりのブランド消費に無駄な金を使う必要はなくなっている。

一方で、アパレル業界でも売上げを伸ばしている企業がある。全国に1430店(2021年2月末現在、オンラインストアを含む)を展開する「しまむら」だ。