ソーシャルディスタンスを取りやすい郊外型店舗

4つ目は、郊外型店舗展開という点にある。立地は主にロードサイドで、当初は、地方の県道沿いの小規模店、近年は家電量販店やドラッグストアに隣接した大型店が多くなっている。2000年代前半より商業施設への出店を進めているが、グループ全体での出店形態をみると、オープンモール型商業施設への出店が約15%、ビルイン型商業施設への出店が約20%で、依然として高い比率を誇るのは郊外型の単独立地である(約65%)。

しまむらの郊外型店舗は1万5000世帯程度の小商圏を前提としており、自転車やマイカーで気軽に出掛けられる距離にある。さらに広い敷地が確保できるため、売場面積も通路幅も広く、ソーシャルディスタンスが取れて、顧客も比較的安心して買い物ができる。外出自粛で駅ビルやファッションビルに立地する同業他社とは好対照を見せている。

流通加工工程を海外で行い、コストを大幅に削減

5つ目に、衣料に特化せず、生活必需品など品ぞろえの幅を広げていた点だ。

しまむらは、世界中のファッション生活雑貨メーカーから選定した約600社の優良工場から高品質で高機能な商品を仕入れて低価格で販売していた。その中でも毎期一定量の販売が見込めるベーシックな「コア商品」を計画的に開発・生産・管理することで顧客を満足させる商品を提供できた。

そのひとつが「裏地あったかパンツ」で、機能性とファッション性を同時に実現できた自社のオリジナルブランドのヒット商品でもあった。海外の生産工場から出荷された商品の仕分けや値札付けなどの流通加工工程を、コストの低い現地で行い、日本国内の自社物流センターに直接納品することで物流コストの大幅な削減につながっている。

自動化・省力化による高度な自社物流システムの開発は、荷物1箱当たりハガキ1枚程度の低コストでの配送を可能にしている。しまむらは常に「小売業の技術革新と多様性こそ、国民社会と消費生活の豊かさを作り上げる基盤である」との立場から、商品の企画から販売まで製・物・販一貫体制を構築している。その強みは、コロナ時代においてもサプライヤーへの交渉・調整が利き、しまむら水準の品質統制に生きている。