カサノバ会長は「勝てば官軍」を証明した
コロナ禍でほとんどの外食産業が苦戦を強いられる中、日本マクドナルドは増収増益という驚異の業績を記録しました。2月9日に発表した2020年12月期決算によると、売上高は2883億3200万円(前年同期比2.3%増)、営業利益は312億9000万円(11.7%増)でした。
就任直後は業績低迷や異物混入などメディアに叩かれたサラ・カサノバ現会長(2021年3月まで社長)でしたが、この結果を見れば彼女の経営者としての手腕を疑う者はいないでしょう。「勝てば官軍」。日本マクドナルド創業者の藤田田社長が変革期によく口にしていた言葉ですが、それを証明したわけです。
日本マクドナルドの増収増益という奇跡の背景には、さまざまな要因があると考えられますが、本稿では同社の「セールスリポート」に注目して論じたいと思います。
2019年より業績が悪化した3カ月間はどこか?
セールスリポートとは日本語で言えば営業報告書です。日本マクドナルドのホームページでは月次の売上と店舗数の情報が毎月更新されています。2020年を通じて店舗数は微増です。つまり他の外食業態が注力したような不採算店の大量閉店には踏み切っていません。
年末時点の店舗数は2924店。一年を通じてのグランドオープンが48店、閉店が34店。結果としてマクドナルドの店舗数は14店増えています。つまり店舗政策について大きな決断があったわけではないことがわかります。
秘密は「月次の既存店売上データ」にあります。ここでクイズです。日本マクドナルドの既存店売上高が2019年と比べて明らかに業績が悪くなった月が3カ月間ありました。ひとつは新型コロナが日本を襲い始めた2020年3月です。残りのふたつの月は何月と何月でしょう?
素直に考えれば「緊急事態宣言が発出された4月と5月じゃないか」となりますが、答えは逆です。2019年より明らかに悪くなったのは、緊急事態宣言が解除された6月と7月でした。
一方、その先の8月から12月までの5カ月間は、既存店売上高は単純平均で前年比9.2%増という絶好調へと転じています。