長期低迷を続けた横浜DeNAベイスターズが近年、好調だ。最弱球団はなぜ生まれ変われたのか。球団のコーチングに携わった日本ラグビーフットボール協会理事の中竹竜二さんは「明確なゴールを設定し、共有し、チーム全員に共感してもらうことで組織文化が変わった」という――。

※本稿は、中竹竜二『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

今季限りでの退任が決まり、最終戦後にファンに手を振るDeNAのアレックス・ラミレス監督(右手前)=2020年11月14日、横浜スタジアム
写真=時事通信フォト
DeNAの監督退任が決まり、最終戦後にファンに手を振るアレックス・ラミレスさん(右手前)=2020年11月14日、横浜スタジアム

0年目、ベンチャー企業出身者が抱いた危機感

プロ野球チームの最終ゴールは何でしょう。

ベンチャー企業DeNAが親会社に就任すると、萩原龍大たつひろさん(現在の取締役兼チーム統括本部本部長)はベイスターズに移り、低迷にあえぐチームの立て直しに乗り出しました。このとき、萩原さんの脳裏に浮かんだのは「チームが魅力的になること」でした。

魅力的なチームとは何か。いくつもの構成要素が浮かびましたが、最後は次のような答えにたどり着きました。

「継続的に強いチームであること」

ファンやスポンサーは強いチームになることを望んで応援しています。だとしたら、最下位争いを繰り返すチームを強くするために何ができるのか。プロ野球なのだから、試合に勝てばいいという考え方もあります。しかし、萩原さんはこう考えました。

「選手を取り囲む周りの大人の教養や魅力によって、どのような選手が育つのかがある程度定義される。だとしたら選手を育てる前に、まずは周りの大人(コーチングスタッフやチームスタッフ)の育成が先ではないか」

選手を育てるノウハウを、コーチやスタッフ一人ひとりが抱え込むのではなく、チームで数多く持ちたいと考えたのです。

外部の知恵を生かすことも大切です。ビジネスの世界では、チームの仲間が連携し、議論を重ねて前に進むのは当たり前のことです。

ところがベイスターズのコーチやスタッフは当時、互いに話し合うこともなく、自分の役割さえまっとうしていればそれでいいと考える組織文化が根づいていました。