ただし、新しい言葉や行動、それを支える価値観を無意識に浸透させるには時間がかかります。だからまずは意識できる部分から無理やりにでも変えていくのです。そうすると、少しずつ無意識へ変わっていきます。

もちろん、意識から無意識に変わる突破口として、言葉よりも先に行動を変えるケースもないわけではありません。何も言わずにただやらせて、そのあとで感想を言葉にさせる方法もあります。ただ、多くの場合は言葉を変えることから入ったほうが変化しやすいと思います。

野球の練習後に笑顔でリラックスする男性たち
写真=iStock.com/mokuden-photos
※写真はイメージです

一人ひとりが変わり、最先端を常に走るスポーツチームへ

「我々は何のために野球をしているのか」

この問いに対して、自信を持って「日本一になるため」と言い切れるまで、ベイスターズでは実に3年の歳月がかかりました。いまでは日本一を目指していない選手やスタッフは一人もいないと萩原さんは言います。

2014年から始まったベイスターズの組織文化を変革する試みは、2021年で8年目に突入します。最初は反発もありましたが、徐々にベイスターズのコーチやスタッフの行動が変わっていきました。

秘伝のコーチングを伝えて空気を変えた一軍外野守備走塁コーチの小池正晃さん。振り返りノートを書き続け、自分を変えた一軍バッテリーコーチの藤田和男さん。職人技を互いに学び合うグループに変えたチーフアスレティックトレーナーの塚原賢治さん。コーチやスタッフの変化が選手に伝わり、選手が自分で動きだすキャプテンの佐野恵太さんら選手たち――。

現在では選手やコーチ、スタッフが互いに学び合い、共有し、新たなことに挑戦して、変化や進化を起こせる組織文化に変わりつつあります。

コーチやスタッフ、佐野キャプテンを筆頭とする選手たちも、自律的に動きだすように変わりました。もう少し時間がかかるかもしれませんが、それでもベイスターズは間違いなく、当初目論んだ「継続的に強いチーム」へ変革を遂げつつあります。

最初から、全員が変革にポジティブだったわけではありません。

たとえ成長しようとする意欲はあっても、すぐに成果が出たり、行動が変わったりするわけでもありません。もがき苦しみながらも学ぶ姿勢を貫いた結果、それが成果となってきたのです。